南島原市の針路 松本市政3期目へ<下> 選択と集中の行政を

2022/06/17 [13:00] 公開

本格的な人口減少社会に向け、持続可能なまちづくりにかじを切った南島原市=同市布津町上空(市提供)

 長崎県南島原市の南東部は有明海の潮風が香るドライブコース(国道251号)だ。休日の晴れた日にはオートバイやサイクリングの愛好者でにぎわう。現在、国道に沿うように市自転車歩行者専用道路(旧加津佐駅―水無川手前、約32キロ)が、来年度の完成を目指して整備が進んでいる。
 島原鉄道(島原市)から無償譲渡を受けた南線跡地を活用して、南島原市が事業化。国の補助事業で総事業費は約35億円(市負担は約5億円)。市民の利便性を高め、サイクリング客を誘致し、交流人口を増やすのが狙いだ。
 「地域活性化の呼び水になる」(40代会社員男性)と期待する声がある一方、「中山間地域の多い南島原に本当に必要な施設なのか」(70代主婦)と、首をかしげる市民もいる。
 本県の自転車保有台数は、1世帯当たり0.55台で全国最下位(2018年、自転車産業振興協会調べ)。市内では中高生のいる世帯は1~3台保有しているが、未保有世帯は約46%(19年市調査)に上る。
 引退した元市議は「身の丈に合わない施設。固定資産税が入らなくなった上、維持管理費が今後膨らみ、そのつけを5年後、10年後に市民が負担することになる」と先行きを懸念する。
 松本政博市長が掲げた3期目のテーマは「持続可能なまちづくり」。ある市OBは「新市発足から16年が過ぎた。学校施設や運動公園、公民館など老朽化が進んでいる。旧8町に重複する公共施設をそのまま維持できない。市長には選択と集中による効率的な行政運営が求められる」と提言する。
 昨年2月に導入した地域通貨「MINA(ミナ)コイン」。使うほど地域活性化を促進、市外へのお金の流出を防ぐ、という触れ込みだが、「利用者が増えるのはチャージ金額に応じてポイントがもらえる時だけ」(40代商店主)と苦笑いを浮かべる。市OBは「キャンペーンの原資は税金。限度がある。市が何でもしてくれる、と勘違いしている住民も多い」と嘆く。
 先の元市議は「人口減少社会への対応は国策でも難しいのに一つの市では到底無理。市民にとって必要な行政機能を把握し、熟慮した判断を」と話す。加津佐町で農業に従事する50代男性は、松本市長と新しい市議にこう注文を付ける。「本当の南島原市の経営者になってほしい。どうしたら南島原に明るい未来が来るのか。市民一丸となって考え、行動していけるように」