ビワの内部腐敗 見逃さない 長崎の自動選果機「本格運用」

2022/05/29 [14:00] 公開

自動選果機の測定データを見てビワを箱詰めする作業員=JA長崎せいひ川原びわ集出荷場

 ビワの糖度や内部腐敗を正確に判別できる最新鋭の選果機が長崎市内にある。昨年、県産の優良品種「なつたより」の共同選果に試験運用し、今年から本格的に使われている。特に果実内の腐敗を見逃さないメリットは大きく、生産の省人化や高付加価値化に役立つと期待が寄せられる。

 同市宮崎町のJA長崎せいひ川原びわ集出荷場。選果作業員が専用の黒いトレーに28個を並べると、エックス線、近赤外線の順に照射される。わずか1分ほどで、果実の表面にそれぞれ黄色の文字で「特3L」「赤3L」などと映し出される。等級と大きさのランクだ。上部のモニターには、重さ「77グラム」や糖度「13.2度」なども表示され、これらの測定データを元に作業員が箱詰めする。「内部障害」と表示されるか、傷があれば取り除く。
 導入したのは、県農林技術開発センターや同JAなどでつくる「長崎びわ生産コンソーシアム」。後田経雄代表(同センター副所長)は「世界に1台しかない」と胸を張る。農林水産省が「スマート農業技術の開発・実証プロジェクト」として導入費を全額支援した。
 この最新IT技術の導入により、ビワ農家が頭を悩ませている内部腐敗の問題を解決できる。外見だけでは熟練者でも判別が難しく、消費者からのクレームも少なくない。新選果機はほぼ100%の確率で見分けられるという。森果樹園(長崎市千々町)の4代目、森純幸さん(48)は「ありがたい。品質向上につながる」と期待している。

献上ビワの検品をする県職員=JA長崎せいひ川原びわ集出荷場

 また、各農家は個別に選果しているが、自動・共同化すれば、収穫に専念できるようになり負担が軽減される。
 導入効果はすぐに出た。最上級品を集めた「特選なつたより」の付加価値が向上し、昨年は平均価格の3倍で取引された。皇室献上品の選果にも使われ、検品した県の担当者は「さらに品質が保証されて安心感がある」と話している。
 現在の1台だけでは、同JAのなつたより出荷総量の10%ほどしか対応できないが、後田代表は「ゆくゆくは割合を増やしたい」と先を見据える。