キラキラ輝くおしゃれな補聴器! デザインカバーのブランド設立、ネイル技術生かす 長崎・西海

長崎新聞 2025/06/27 [12:20] 公開

色鮮やかな補聴器カバー

色鮮やかな補聴器カバー

  • 色鮮やかな補聴器カバー
  • 長崎市の体験会で濵村さん(右端)から補聴器カバーの説明を受ける来場者(中央2人)=長崎市江川町、リエゾン長崎南館
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「補聴器を身近でおしゃれにして笑顔になってほしい」。西海市西彼町を拠点にレジン(樹脂)アートを手がけるStudioKAIの代表、濵村裕二さん(54)がネイル技術を活用した補聴器カバーブランド「COCO H.A」(ココハ)を今年3月に立ち上げた。補聴器にデザインカバーを取り付ける新しいファッションとして注目を集めている。
 濵村さんは一般企業で働いていたが2018年にレジンアートを独学で習得。海をテーマにテーブルやインテリア雑貨を作り始めた。その後、会社を辞めて独立。自宅兼アトリエで本格的に創作活動を始めた。作品は評価され、国内外で個展を開くようになった。
 補聴器カバーのきっかけは、先天性の聴覚障害者でインフルエンサー、難聴うさぎさんとの出会い。「補聴器をかわいくしておしゃれなイヤリングとか付けたいけど、落として壊すこともあるし、紛失もする」。課題を初めて知った。
 「軽いノリ」で製作することを決めたが、個展の準備、手間やコストが思った以上にかかり一度は断念。だが、東京で個展をしているときに知人のネイルサロンオーナー兼デザイナー、佐藤香菜子さん(38)から連絡があり、補聴器カバーの製作を相談。佐藤さんはネイルの技術を駆使して試作を繰り返し、耳かけ式のカバーを完成させた。厚手の両面テープで貼り付けることによって実用化した。
 日本補聴器工業会によると、補聴器を使用した方がいいと思われる日本人患者数は約1430万人に対し、利用者数は13%に当たる220万人。50%近く普及している欧州などに比べると低い。理由として「恥ずかしい」「落としやすい」「高価なのに汗などで壊れやすい」などがある。
 濵村さんは「補聴器カバーでこの問題が解決できる」と加盟店を募った。研修が必要なため、現在は北海道や大阪など県外6店舗でしか取り扱っていない。今後は全国展開を目指し、クラウドファンディングサイト「CAMPFIRE(キャンプファイヤー)」で協力を呼びかけている。
 今月24日には長崎市で初めて体験会を実施。70代女性は「補聴器の見方が変わった。おしゃれ感覚で使いたくなる」。濵村さんも「実物を見てもらえるのが一番。もっと認知度を上げたい」と手応えを語った。
 濵村さんには、もう一つ狙いがある。難聴者をはじめとする障害者が研修を通してネイル技術を取得し、所得向上の手段として活用できる環境をつくることだ。「障害者が輝ける未来をつくることにより公平な社会になってほしい」
 思いを形にしたプロジェクトは動き出したばかりだ。