優勝、昇格へ準備万端 「ワクワクするバスケット」を

2021/09/26 [13:20] 公開

B2昇格を目指してチーム練習に励む選手たち=佐世保市、長崎ヴェルカクラブハウス内体育館

 10月1日に開幕する男子バスケットボールBリーグ3部(B3)の2021~22シーズン。昨年10月末に誕生した長崎ヴェルカがいよいよ始動する。参戦初年度からB2昇格を狙える地元チームを紹介する。
 B1のA東京などで指揮を執ってきた伊藤拓摩監督が掲げているのは「見ていてワクワクするバスケット」。ヴェルカは9月19~23日の天皇杯全日本選手権2次ラウンドで、そのテーマ通り躍動感あふれるプレーを見せた。全員が体を張って守る、外国人選手にありがちな自己中心的なプレーがない、何よりもスタッフや選手の結束力が強い-。中高校生の「お手本」とも言えるようなチームに仕上げてきた。
 司令塔を務めるのは、昨季B1でプレーした狩俣昌也と山本エドワード。30代のベテランの存在が試合に安定感を与える。スタミナ抜群の松本健児リオン、高比良寛治らガード、フォワード陣は、速攻で先頭を走り、その足は最後まで止まらない。インサイドで力を発揮するのはマット・ボンズ、ハビエル・カーター。シックスマンのジェフ・ギブスはB1宇都宮で優勝を経験したオールラウンダーだ。
 バックアップ陣も心強い。4月のトライアウトから加入した大卒ルーキーのディクソンJrタリキは、激しい守備から流れを持ってくる。天皇杯は主力としてチームの勝利に貢献した。身長196センチの野口大介は外国人選手とのマッチアップに対応。192センチの菅澤紀行は状況に応じた役割を果たせる。
 今季の登録メンバーは14人。その全員が共有しているのが、外角のシュート力と攻守両面の速い展開に対応できる脚力。各種制限もあった中、伊藤監督やスタッフ陣とともに、急ピッチで「ヴェルカスタイル」をつくりあげてきた。
 力試しの1戦となった9月12日のプレシーズンマッチ。ここでB2福岡に104-96で競り勝つと、天皇杯全日本選手権2次ラウンドも3戦全勝。昨季のB3で100点ゲームを記録したのは全214試合中36試合あった中、リーグ戦前の計4試合のうち2試合で100点を超えた。ターンオーバーからの速攻あり、豪快なダンクシュートあり。全員で「見ていてワクワクするバスケット」を体現した。
 リーグ戦開幕前から他チームに強烈な印象を与えたヴェルカ。当然、マークは厳しくなってくるだろうが、チームの士気は高く、気負いもない。56試合のシーズンでどれだけ勝ち星を積み重ねるか。10月2日、アウェー鹿児島戦から地元バスケファンの夢を背負ったヴェルカの歴史が始まる。

◎インタビュー 長崎ヴェルカ 伊藤拓摩監督(39) チームを確立させていく

 長崎ヴェルカのゼネラルマネジャーとしてチームをつくり、リーグ参戦初年度の指揮を執る伊藤拓摩監督。確固たる信念を持って本番へ臨む39歳の青年監督に、これまでの手応えや今季の目標などを聞いた。

天皇杯全日本選手権2次ラウンドで指揮を執る伊藤監督。自信を深めてB3リーグに臨む=愛知県稲沢市、豊田合成記念体育館((c)タイムズメディア)

 -チームづくりの手応えは。
 練習で感じた第一印象は、選手やスタッフの人間性やリーダーシップの高さ。バスケットの部分もヴェルカが求めるものに素早く対応してくれている。
 -選手全員が3点シュートを狙える陣容。基本的な戦術は。
 「ファイブアウト」というもので、5人全員が3点ラインの外にいる形から攻撃が始まる。東京五輪で銀メダルだった女子日本代表も、選手が目まぐるしく動きながらスペースをつくり、積極的に3点シュートを狙っていた。
 -ベテラン、中堅、若手と幅広い年齢層の選手がそろった。
 B2、B1へ昇格したチームや、米プロNBAで優勝したチームなど、実際に勝つチームを調べると、ベテランと中堅で7~8割、若手2~3割というメンバー構成が大半だった。そういう視点からチームをつくり始めた。勝利に貢献してくれそうな選手が集まってくれたのはもちろんだが、1年目のチームにとって、いろんなコーチの下でやってきたベテランの存在は大きい。
 -技術だけでなく、日々のトレーニングでコンディションの向上を実感している選手も多い。
 スポーツは心技体で、私は戦術戦略以外の体の部分が素人同然。中山佑介さん、高橋忠良さんらトレーナー陣が選手と緻密にコミュニケーションを取り合ってくれている。明らかに1カ月前より選手の力、素早さが身についているのはさすがだなと感じる。NBAのチームに帯同経験がある中山さんのような世界のトップレベルで働いてきた方の存在は勉強になる。
 -シーズン中の試合で気をつけることは。
 練習では自分たちのペースでやれる分、激しく展開が速いものになっているが、対戦相手によってはペースが遅かったりとか、引いて守ってきたりとか、そういうところで対応する必要はある。そこはシーズンを戦いながら修正していく。
 -選手の起用方法は。
 試合によって変わる。基本的に試合の40分間を通して、攻守の強度、激しさを落とさないように戦うので、15~20分間の出場の選手が増えてくると思う。
 -目標を。
 一つ一つ勝つことの難しさはあると思うが、まずは長崎の皆さんをはじめ、日本のバスケットボール界にヴェルカがどういうチームなのかを確立していくこと。そこに集中しないと足をすくわれると思うし、B2へ昇格できないというのは一番避けたい。

 【略歴】いとう・たくま 三重県出身。中学卒業と同時に米国へ留学。バージニア・コモンウェルス大卒。2009年にトヨタ自動車アルバルクのアシスタントコーチとなり、Bリーグがスタートした16年にA東京ヘッドコーチに就任。18年からはテクニカルアドバイザーなどを務めた。20年9月から現職。39歳。