改正コロナ特措法成立 「差別助長しない運用を」 長崎県内の保健所関係者 疫学調査への影響懸念

2021/02/04 [10:20] 公開

 新型コロナウイルス対策で疫学調査や入院拒否に罰則を導入した改正感染症法が成立した3日、長崎県内で調査を担う保健所関係者などからは刑事罰の削除を一定評価する一方、患者との信頼関係が大切として、行政罰の運用に慎重さを求める意見が聞かれた。
 「刑事罰を科すのは抵抗があった。行政罰になったのは良かった」。長崎市の感染症対策担当者は改正法をこう受け止める。ただ、疫学調査について「住民に寄り添って信頼関係を構築して聞き取りするのが基本。罰則規定を振りかざすと感染者が萎縮するのではないか」と危惧する。感染者は多くのストレスを抱えているため「制度が差別の助長にならないよう慎重に運用しないといけない」と懸念を示した。
 保健所管内で感染者が確認されれば、保健師はすぐに面会に向かう。行動歴や接触者の有無を聞き取り、性別や年代、職業を公表するかも確認する。調査は1人当たり1~2時間かかることも少なくない。行動歴などの調査は任意。個人情報を丁寧に細かく聞くが、虚偽報告されれば見抜くのは難しい。県内のある保健所関係者は「うそ発見器を付けられるはずもなく、信用するしかない。罰則がかえって偏見を助長し、調査に答えにくくなるのでは」と疑問を投げ掛けた。
 別の保健所関係者も「聞き取りはかなり大変で非常に気を使う」と強調する。誹謗(ひぼう)中傷もあるため、感染者は身構え、自分が特定されるのを極端に恐れると言う。「保健師は患者を守る義務がある。(調査を)法律で縛るのはどうなのか、一長一短が出てくるだろう」と複雑な表情を見せた。
 県によると、今のところ県内で入院を拒否した事例はない。感染防止策を担う自治体には感染者に入院してもらいたいとの思いはある。佐世保市の新型コロナ対策担当者は「入院を拒否された場合、市中感染が広がってしまうので、保健所の指示に従ってほしい。全国的に考えると、最終的な歯止めとして(強制力のある法律が)あってもいいかもしれない」と話した。