昨年12月5日夜、長崎県五島市奈留島。島内で倒れた60代男性を島外に搬送するため、県奈留医療センターの関係者が遊漁船や海上タクシーなど搬送協力事業者の名簿を基に、次々と電話をかけた。だが、連絡が取れないか、つながっても返答は「対応できない」だった。夜間で担い手は見つからず、最終的に名簿外の船をチャーターして福江島へ搬送せざるを得なかった。手配までに約1時間を要した。
医療資源が限られる二次離島では急変時の島外搬送が命を左右する。だが、海上タクシーやドクターヘリ、海上保安庁、自衛隊、防災ヘリなど官民の航空機や船を組み合わせる想定でも、時間帯や天候、人員の制約で「使える手段」は限られるのが現実だ。
奈留島では長年、民間の海上タクシーが「海の救急車」として急患搬送を担ってきたが、事業者の高齢化や国の制度改正、船舶の老朽化を受け、同11月末で廃業した。島内唯一の民間医療機関も同10月末で廃院。県奈留医療センターは常駐医1人だけとなるなど、医療体制は細っている。
名簿は緊急時に連絡可能な事業者を医療機関と消防本部が共有し、対応のよりどころとしているが、「実際に動けるかどうか」は別問題だ。委託という縛りはなく、夜間や荒天時に応じられない事例が重なれば、名簿は事実上、機能不全に陥る。奈留島での出来事は、その象徴だった。
消防組織法は、救急搬送を含む消防の一次的な責任を市町村に置く一方、都道府県には広域調整や専門的支援という補完的役割を与えている。現状、市は人手と手段確保に限界がある一方、県は直接の運用主体ではない。こうした制度のはざまで、二次離島の海上での救急搬送を巡る現場では、結果として、多くの判断と負担を背負うのは住民という構図が続いている。
一方、島しょ部の救急搬送を行政の責任として位置付け、体制整備を重ねてきた自治体もある。鹿児島県瀬戸内町は消防が運用する救急艇を配備し、建造段階では県の離島向け補助制度を活用しながら、24時間対応の体制を維持している。運用主体は町だが、初期投資で県が関与することで、長期的な搬送体制を支えてきた。
奈留島のある住民は言う。「もう、要望や調整の話をしている余裕はない。自分たちが直面しているのは、『今夜どうするか』ということだ」
医療資源が限られる二次離島では急変時の島外搬送が命を左右する。だが、海上タクシーやドクターヘリ、海上保安庁、自衛隊、防災ヘリなど官民の航空機や船を組み合わせる想定でも、時間帯や天候、人員の制約で「使える手段」は限られるのが現実だ。
奈留島では長年、民間の海上タクシーが「海の救急車」として急患搬送を担ってきたが、事業者の高齢化や国の制度改正、船舶の老朽化を受け、同11月末で廃業した。島内唯一の民間医療機関も同10月末で廃院。県奈留医療センターは常駐医1人だけとなるなど、医療体制は細っている。
名簿は緊急時に連絡可能な事業者を医療機関と消防本部が共有し、対応のよりどころとしているが、「実際に動けるかどうか」は別問題だ。委託という縛りはなく、夜間や荒天時に応じられない事例が重なれば、名簿は事実上、機能不全に陥る。奈留島での出来事は、その象徴だった。
消防組織法は、救急搬送を含む消防の一次的な責任を市町村に置く一方、都道府県には広域調整や専門的支援という補完的役割を与えている。現状、市は人手と手段確保に限界がある一方、県は直接の運用主体ではない。こうした制度のはざまで、二次離島の海上での救急搬送を巡る現場では、結果として、多くの判断と負担を背負うのは住民という構図が続いている。
一方、島しょ部の救急搬送を行政の責任として位置付け、体制整備を重ねてきた自治体もある。鹿児島県瀬戸内町は消防が運用する救急艇を配備し、建造段階では県の離島向け補助制度を活用しながら、24時間対応の体制を維持している。運用主体は町だが、初期投資で県が関与することで、長期的な搬送体制を支えてきた。
奈留島のある住民は言う。「もう、要望や調整の話をしている余裕はない。自分たちが直面しているのは、『今夜どうするか』ということだ」
