菅内閣発足 長崎県内各界から注文さまざま

2020/09/17 [11:00] 公開

新幹線駅やMICE(コンベンション)施設などの建設が進むJR長崎駅付近=長崎市

 新型コロナウイルス、新幹線、災害、平和、まちづくり-。16日に発足した菅新内閣には、長崎県内各界からさまざまな注文が相次いだ。

 【県の主要施策】
 「正確で迅速な判断がないと新型コロナには勝てない。スピード感を持って対応してほしい」。県医師会の森崎正幸会長は、安倍内閣の対策が遅れていたと指摘する。「第1波と2波を踏まえ、早期に治療法を確立し、ワクチンを確保してほしい」と注文。県商工会議所連合会の宮脇雅俊会長は「感染拡大防止と社会経済活動の両立を最優先に」と述べた。新型コロナの影響で国のスケジュールに遅れが出ているカジノを含む統合型リゾート施設(IR)の誘致を目指す朝長則男佐世保市長は「市は誘致に向け住民の理解など環境整備に努めるので、国は基本方針をできるだけ早く決定してほしい」と要望した。
 九州新幹線長崎ルートは、未着工区間(新鳥栖-武雄温泉)の整備に先立つ環境影響評価に佐賀県が同意せず、財源論議に乗り遅れる可能性も。宮本明雄諫早市長は「国土全体の発展を考えればフル規格が必要。(新幹線と在来線を乗り換える)リレー方式が続けば利便性が落ち、これまでの投資が生かされない」と懸念。「佐賀県の思いをくみ取りながら国が整備を主導的に進めるべきだ」と強いリーダーシップを求めた。
 県と佐世保市の石木ダム建設事業に反対する東彼川棚町の地元住民、石丸勇さん(71)は「安倍政権の考え方を継承すると言っているので、これまでと何も変わらないだろう。期待はしていない」と冷ややか。
 中村法道知事は「菅首相は総務大臣も経験され、地方自治の実情に詳しい。引き続き、地方創生の推進に力を注いでいただけると期待している」とのコメントを出した。

 【災害】
 大村市のビニールハウスでトマトを栽培し、7月の大雨で作物が流されるなどの被害を受けた立田喜子さん(54)は「復旧に向けた給付金の申請がややこしくて大変。負担を減らすためにもっとスムーズにできるようにして」と訴えた。JA県中央会の辻田勇次会長も「今月の台風で県内農業には甚大な被害が出た。地域の実情に応じた助成を」と求めた。

 【平和・安全保障】
 「米国の“核の傘”から脱却するため、(北朝鮮、韓国などを含む)北東アジアの非核化に向けた研究を進めて」と注文するのは県被爆者手帳友の会の朝長万左男会長。発効まで6カ国・地域に迫る核兵器禁止条約批准や被爆体験者問題の政治解決なども求めた。
 東アジア地域安全保障が専門の長崎大非常勤講師、篠崎正人さん(73)は、安倍前首相が外交面で世界に日本の存在感を示した一方、近隣諸国とは領土問題などで関係が構築できていないと分析。「新しい発想で周辺国との関係を回復してほしい」と望んだ。

 【経済・まちづくり】
 田上富久長崎市長は「(首相は)地方の実情に目配りをされる方」と歓迎。九州新幹線長崎ルートや長崎港松が枝埠頭(ふとう)の2バース化など、県都のまちづくりについて「長崎の発展のために必要な事業。引き続き技術面、財政面を含めた支援を」と要望。黒田成彦平戸市長は「菅首相にはふるさと納税などで支援をいただいたので期待している」と述べた。
 五島市で観光ガイドやボランティア活動などに取り組むNPO法人アクロス五島の山口澄子理事長(58)は「離島の経済対策はもちろんだが、五島へ大量に漂着する海ごみ対策も重要課題。島の美しい自然を残すためにも、国際交流の中で漂着ごみを減らす努力をしてほしい」と話した。