五島市長選終盤情勢 野口氏、異例の“距離感”に戸惑い 中西氏、政策を訴える時間限られ

2020/08/28 [10:42] 公開

両陣営は新型コロナの影響で集会を開けず、街頭演説などを中心に選挙戦を進めている=五島市内

 任期満了に伴う五島市長選は、30日の投開票に向け終盤戦に入った。経験や実績をアピールし3期目を目指す無所属現職の野口市太郎候補(64)=自民・公明推薦=と、若さを打ち出す無所属新人の中西大輔候補(31)=立民推薦=が、人口減や新型コロナウイルス対策などをテーマに論戦を展開。感染対策で街頭活動が中心となる中、訴えが市民にどれだけ届いているか、両陣営は手応えをつかみかねている。
 同市は、中心部の福江島以外に大小さまざまな有人島が点在。告示翌日の24日には、人口約2千人の二次離島、奈留島に両候補が乗り込み、選挙カーが“ニアミス”する場面もあった。
 朝一番のフェリーで奈留島入りした野口候補は、集落の奥まで選挙カーで乗り入れ、要所では集まった市民を前に演説。福江島でも一定の支持者が集まっており、同行した市議は「新型コロナで積極的に事前の声掛けができなかったが、思ったより集まってくれた」と好感触を得た様子だ。
 ただ握手しようと伸ばした手を引っ込め、おじぎや「肘タッチ」に切り替えるなど微妙な“距離感”を感じさせる場面も。陣営スタッフは「手を握り返してくれる力の強さも支持の目安になるのだが…」と、従来と異なる選挙戦に戸惑う。票の上滑りを警戒しつつ、大票田の福江地区などで支持固めを急ぐ。
 一方の中西陣営。1年以上前から街頭演説を続けた成果として「『いつも交差点に立っていた人ね』との声は確実に増えた」と陣営幹部は語る。中西候補も「自分の声で伝えたい」と、街頭だけでなく選挙カーで移動中にも自らマイクを握り、名前を売り込む。
 しかし集会などを開けないことで、じっくりと政策や思いを伝えられないという悩みも。通行人やドライバーが相手で、訴える時間も限られる街頭演説では、「『若い』『新しい』などふわっとした言葉しか使えない」(中西候補)。集会の代わりに、夕方以降は本人を含むスタッフ総出で有権者に電話をかけ、地道に票の上積みを図る。
 選挙戦となった前回2012年の投票率は61.90%で過去最低。両陣営は「選挙への関心が低い」とさらに下回ることを懸念する。新型コロナからの復活に向け、市政を導くリーダーを決める大切な選挙。どこまで市民の関心を高められるか、注目が集まる。
 有権者数は3万1637人(男1万4825、女1万6812)=22日現在、市選管調べ=。