緊急事態宣言 対象“エリア”家族の心配 長崎でも動揺

2020/04/08 [11:20] 公開

博多発の特急が到着し、降りてくる乗客は少なかった=7日午後2時53分、長崎市尾上町、JR長崎駅

 緊急事態宣言が発令された7日、対象7都府県に家族がいる県内の保護者らは「毎日、無事を確認している」などと不安を口にした。幼児の感染を恐れて発令前に帰省した人、帰省させず娘に会いに行った人、食材を息子に送る人。家族の、自分の、地域の感染を心配して、それぞれ気持ちは揺れている。
 大村市箕島町の長崎空港では、発令を前に対象地域となる関東や関西から帰省する人たちの姿があった。
 関西の大学に通う女子大学院生(23)は親の勧めで帰省した。「少なくとも4月中はオンラインでの授業になるため、実家でも受けることはできる。修士論文に向けたデータも取っていかないといけない時期なので、秋くらいまでには収束してほしい」。迎えに来た父親(57)は「自宅には高齢の母がいるため、娘を帰って来させるのにも気を使った。なるべくリビングに立ち入らないようにさせるなど、しばらく様子を見たい」と話した。
 神奈川県に住む主婦(28)は、5歳と3歳の息子を連れて空港に着いた。「子どもが幼いのでやはり不安。夫だけ残ってもらい、当面は実家にお世話になろうと思う」
 長崎市尾上町のJR長崎駅に到着した博多発特急列車かもめは乗客もまばら。福岡市内の大学に今春進学した娘に会い、戻ってきた長崎市の女性は「不要な外出は普段控えているが、新生活の準備もあるので…。大学の授業開始も延期されたが、娘には『休みでも(実家に)帰ってくるな』と伝えてきた」と話す。
 「1日でも早く戻ってきてほしいが、ウイルスを持って帰ってくる可能性もあるし…。歯がゆいし、ただただ不安」と語るのは、諫早市内の50代男性。20代の長女は東京都内の病院に勤めている。2月下旬に一度「帰ってこないか」と誘ったが、「簡単に仕事を休めるはずがない」と断られた。今は毎日メールをやりとりし、娘の無事を確認する日々。「娘の顔を見て安心したい」とため息が漏れた。
 佐世保市の自営業、山本由貴子さん(61)は東京で働く次男が気掛かり。「会いに行って様子を見ることもできない。無理をしてなければいいのだが」。次男は買い物も極力控えており、佐世保から食材などを送っているという。
 西彼長与町の会社社長、毎熊一太さん(53)は緊急事態宣言について「正直なところ遅かったと感じる。これで本当に収束するのかどうか。宣言によって何をどうしたいのかが見えてこない」と困惑する。島原市の飲食店経営、松本望生さん(29)は「都会にいる島原出身者が、ゴールデンウイークに帰省しないと客足にも影響すると思うので困る」と今後を心配する。
 市民団体「女の平和in長崎」の共同代表、井形和子さん(83)は「安倍首相は何が何でも五輪をやるために初期の対応がおろそかになり、こういう事態を招いたのでは。感染が膨らむ中でやむを得ないとは思うが、(過去の)政権は当初は人権を制限するものじゃなかった治安維持法で、気に入らない人たちを縛っていった。そういう歴史を頭に置いておかないといけない」と指摘した。