終末時計の針

2020/01/28 [09:41] 公開

 私事で恐縮だが、筆者が普段使っている腕時計の針はあえて進めている。早め早めの行動を自らに促すための工夫なのだが、今や勝手に進み9分ほども早い▲そう言いながら針の動きは頭にあるので、まだ余裕があると油断し、結局、約束に遅れてしまうことも。何をやっているのかと反省しきりである▲では、こちらの時計の針を世界の人々はどんな感覚で見ているのだろう。米科学誌が発表している「終末時計」。核戦争の危険性などを評価し、地球最後の日までの残り時間を概念的に示すもので、先日、最新時刻が「100秒」と発表された▲米国とソ連が軍拡競争へと向かう1947年に創設され、水爆開発が過熱した53年には「2分前」に。その後、針は進退を繰り返し、北朝鮮の核問題が深刻化した2018年から再び「2分前」となった▲過去最短となり、秒単位で示された今回は核大国の軍縮後退などが背景にあるが、温暖化による気候変動の脅威も重要な要素として考慮されたという。巨大台風などがもたらす壊滅的な混乱は日本もよく知るところだ▲戦争にしろ、温暖化にしろ、余裕たっぷりに構えていられる状況ではない。個人の時計ならば一手間で針は戻せるが、終末時計の針を動かすには政治指導者をはじめ世界中の人々の努力が不可欠なのだから。(久)