10月1日法の日 裁判員制度10年 「見て聞いて分かる裁判」へ

2019/10/01 [00:02] 公開

「裁判員制度10年」をテーマに鼎談する長崎地裁の田口所長(中央)、長崎地検の仁田検事正=当時=(左)、県弁護士会の森永会長=長崎市万才町、長崎地裁

 裁判員制度が始まって今年で10年。制度導入により、司法の場では、どのような変革が生まれたのだろうか。「裁判員制度10年」をテーマに本県の法曹三者トップが鼎談(ていだん)し、「法廷で見て、聞いて、分かる裁判へ転換された」と10年間の成果や課題を語り合った。10月1日は法の日。
 鼎談したのは、長崎地裁の田口直樹所長、長崎地検の仁田良行検事正(当時)、県弁護士会の森永正之会長。裁判員制度について県内法曹三者トップによる鼎談は初めて。9月4日、同地裁で実施した。
 10年を振り返り、田口所長は「始まる前は本当に裁判員が来てくれるのかと不安があったが順調に運用されている。長崎の方々にご理解とご協力を頂いた成果」と強調。森永会長は「(検察官も弁護士も)裁判員に分かってもらうため、『何が重要か』を以前より意識するようになった」と変化の実感を述べた。
 仁田検事正は「裁判員制度は戦後最大の司法制度改革だった。取り調べの録音録画もでき、無理やり言わされたかどうかという任意性が争われなくなった」と評価した。
 本県特有の課題としては「離島の多さ」が挙がった。移動負担などを考慮し、裁判員が参加しやすくするため、最適な審理時間の検討を重ねていく必要性をそれぞれ述べた。
 裁判員の守秘義務について、田口所長は「裁判員本人よりも周りの家族や職場が『全く聞いてはいけない』と配慮し過ぎる面がある」と指摘。制度への理解を深めるために「経験を語ってもらえる機会をつくっていきたい」と話した。
 裁判員裁判は殺人や強盗致死傷など「死刑または無期の懲役・禁錮に当たる罪」や、傷害致死、危険運転致死など「故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪」が対象。長崎地裁によると、県内では1月末現在、373人が裁判員、138人が補充裁判員を経験した。裁判員裁判で判決が言い渡された人数は67人(9月4日現在)。