石木ダム全用地収用へ 19日 一部明け渡し期限 地権者、反発強める

2019/09/18 [10:48] 公開

石木ダム建設に反対し、県道の付け替え道路で座り込みをする地権者ら=川棚町

 長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設を巡り、建設予定地に住む反対地権者13世帯の宅地を含む全ての未買収地約12万平方メートルが19日、土地収用法に基づく「権利取得の時期」を迎える。一部の土地の明け渡し期限ともなる同日、地権者と中村法道知事が約5年ぶりに県庁で面会する予定だが、地権者側は「強制収用は許さない」と反発を強めており、溝が埋まる気配はない。

 17日午前、ダム建設に伴い水没する県道の付け替え道路の工事現場に、地権者ら約30人が日傘を差して座り込んでいた。取り囲むように県職員が立つ。2017年8月からほぼ毎日続く抗議行動は既に700日を超えた。地権者の一人、岩本宏之さん(74)は「私たちの生活への影響はもちろんだが、毎日派遣される県職員の人件費もばかにならないはずだ。こんな公共工事はどう考えてもおかしい」と憤る。
 県収用委員会の裁決で、権利が県と佐世保市に移る未買収地のうち、12.1%は19日に明け渡し期限を迎える。家屋などの物件を含む残りの土地は11月18日が明け渡し期限。地権者が期限までに応じなければ、県と同市は知事に行政代執行を請求できる。県河川課によると13世帯の地権者は補償金を受け取らなかったとして、国に供託した。
 こうした中、強制収用に反対する動きが活発化。家屋撤去や住民の排除といった行政代執行に反対する県内外の議員73人が14日、「石木ダム強制収用を許さない議員連盟」を設立した。長崎市や佐世保市などでは反対集会が相次いで開催。17日には、前日に川棚町内であった集会の参加者が県庁を訪れ、「(県が行政代執行に踏み切れば)全国に呼び掛け、圧倒的な人の壁を築き阻止する」などと記した宣言文を河川課に提出した。
 地権者で同町議の炭谷猛さん(68)は「『強制収用はさすがにおかしい』と立ち上がり、声を上げる人が増えてきた。知事との面会では『県はこうした世論を無視してまでダムを造るのか』と迫りたい」と言葉に力を込める。