アワビ陸上養殖にICT 島原漁協が長崎県で初導入

2019/09/13 [00:00] 公開

水温などを測定するセンサーと養殖アワビを示す高木場長=島原市洗切町

 島原漁協(長崎県島原市)がアワビの陸上養殖に情報通信技術(ICT)を導入し、効率化や危機管理能力の向上を図っている。水温や塩分濃度などの水質測定を自動化することで、養殖環境をスマートフォンで常時把握でき、異常発生時には即座に対応することが可能となった。市農林水産課によると、陸上養殖でのICT導入は県内初という。
 同課などによると、低迷する漁船漁業の補完などを目的に、同漁協は2011年度にアワビの陸上養殖を開始。地場産ワカメとコンブだけを飼料に使うなど差別化を図り、鮮やかな緑色の殻に、磯の香りと歯応えの良さが特長という島原産を「ジオアワビ」のブランド名で販売している。
 同漁協は2カ所のアワビ陸上養殖施設を保有。新田町の第1養殖場(500リットル水槽56基)は稚貝約7万個、洗切町の第2養殖場(同28基)では約2万個の計9万個を育成している。
 同市はICT導入で効率的な養殖を支援しようと、総務省の事業を活用。18年度事業として、異常を知らせる仕組みがなかった第2養殖場に、事業費約616万円を掛け測定用のセンサーやデータ通信用機器などを設置、2月に稼働した。
 ICT導入前は、飼育担当者が水槽7基が4列並ぶ同施設内で、1基ずつ塩分濃度、水温、水中酸素量の3項目を測定するなど半日を費やしていた。導入後、測定は1時間ごとに自動で実施され担当者の負担軽減につながった。また、場所や時間を問わず、常時スマホで水槽の状態を把握できる上に、異常の有無も確認できるようになった。
 同施設では近くの有明海から海水をくみ上げているが、昨年7月、豪雨で塩分濃度が低下した海水を取り込み稚貝が全滅。養殖場の高木将愛(まさちか)場長(52)は「あの時の状況は忘れられない」と振り返り、「今は異常があればアラームが知らせてくれる。職員が餌の管理や水槽の清掃などに専念できるなど飼育も効率化された」とICT導入のメリットを語る。今後は職員が常駐する第1養殖場と同程度の生存率80%の達成を目指すという。