博士号を取得!長崎の中小企業社長(69) 組織論を研究、若い世代から刺激「学び直し遅過ぎることない」

長崎新聞 2025/06/27 [12:30] 公開

「中小経営者に学び直しを勧めたい」と話す熊さん=長与町高田郷

「中小経営者に学び直しを勧めたい」と話す熊さん=長与町高田郷

大きい写真を見る
長崎県西彼長与町高田郷の住宅型有料老人ホーム「ブルーインの森」などを経営する長崎木装(長崎市)の熊浩輔社長(69)は今春、長崎大大学院経済学研究科で経営学の博士号を取得した。中小企業の事業主として学ぶ中、現場の課題を解決する糸口が見えたという。「学び直しに遅過ぎることはない。中小企業経営者はぜひチャレンジしてほしい」と勧める。

 長崎大経済学部卒。長崎文化放送勤務などを経て、父から船舶艤装(ぎそう)の会社を受け継いだ。会社を異業種に転換して2002年、長与町の自社敷地に「ながさき医療・福祉・健康タウン ブルーインの森」を立ち上げた。老人ホームのほかにパン店などのテナントが入り、地域の人が活用している。

 「経営は経験だけ。学術的な知見はほとんどなかった」。企業をどう存続させるか考えようと大学院に挑戦。同大経済学部の先輩でアサヒビール社長やNHK会長を務めた故福地茂雄さんに生前、一生学び続けることの大切さについて薫陶を受けたことも背中を押した。

 主に研究したのは経営学の組織論。「地域包括ケアシステム」のみとりチームを対象に、組織内の非公式(プライベート)な信頼関係の構築が、結果的には公式の機能にプラスに働くことを研究した。

 64歳で博士前期課程に進んだ当初は教授が話す言葉自体が難解だったが「非常に丁寧に厳しく指導を受けた」と振り返る。学術的な知識だけではなく勉強になったのは、いかに自分の思い込みや偏見に縛られているかに気付いたことだった。「経営者は現場重視だが、実務と学術の両輪で物事を多角的に見られるようになる」

 30、40代の会社員、主婦、留学生、薬剤師、行政書士らと共に学んだ。熊さんより若い世代が多く、刺激を受けた。指導の林徹教授(60)は「熊さんは経験豊富で、他の院生に対しても的確なコメントをしていた。本当に熱心にやり抜いた」と評価する。

 長年共に働くブルーインの森フロント統括マネージャー、園田千津さん(53)は「20年経営して新たに勉強とは想像できなかった。今はいろんな立場から多角的に見てくれる」と話す。熊さんは「学び直しに遅過ぎることはなく、中小企業の経営者が自ら学ぶ姿勢を示すと社員の意識向上にもつながる。それが長崎経済の底上げにつながれば」と語った。