カフェ通じ「認知症に優しいまち」に 五島で認知症カフェフェスタ

2019/09/01 [09:53] 公開

認知症の人を地域で支えるための取り組みなどについて学んだ講演会=五島市三尾野1丁目、福江総合福祉保健センター

 認知症への理解を深め、地域全体で当事者を支援する拠点「認知症カフェ」について考える「GOTO認知症カフェフェスタ」が8月31日、長崎県五島市内であった。東北福祉大の矢吹知之准教授は講演で、カフェは「『認知症に優しいまち』を凝縮したモデル」と説明。認知症の人や専門家だけでなく、子どもや若者を含めた地域住民の誰もが当事者意識を持ち、協働することが必要だと指摘した。

 市主催。認知症カフェはオランダで始まった取り組み。認知症の人やその家族、近隣住民らが集まり、専門家による講話を聞いたり参加者同士で対話したりする。高齢化が進む同市も、将来的には住民団体や福祉施設などを巻き込み、各地でカフェを運営する構想を描く。
 矢吹准教授は、物忘れなどの初期症状が現れて認知症と診断される前後から、本格的な介護を受けるまでに一定の「空白期間」があると指摘。この期間に当事者は将来に「絶望」し、社会との関わりを避けて孤立する傾向にあるという。
 これに対し、認知症カフェは誰でも拒まず受け入れ、感情面や情報面で当事者をサポート。多様な地域住民と共に学びながら偏見をなくし、苦しみを打ち明けることで「空白期間を満たすことができる」と述べた。
 また、年齢を重ねると誰でも認知症になる確率は高まるとして、「あちら(認知症の人)とこちら(認知症ではない人)という二項対立ではなく、誰もが当事者として、対等な立場で関わり合うことが大切」と呼び掛けた。
 講演会には地域住民や福祉施設の関係者ら80人余りが参加。フェスタではこのほか、実際に認知症カフェでアート活動をしたり講話を聞いたりする体験コーナーもあった。