「負の連鎖 止めたい」 日韓300人が通信使行列 対馬

2019/08/05 [11:00] 公開

日韓関係が冷え込む中、江戸時代に朝鮮王朝から日本に送られた外交使節団「朝鮮通信使」行列を再現する日韓交流イベントが4日、対馬市厳原町で開かれた

 江戸時代、朝鮮王朝が日本に送った外交使節団「朝鮮通信使」行列を再現する日韓交流イベントが4日、長崎県対馬市厳原町であり、両国の市民ら約300人が当時の衣装で練り歩いた。日韓関係が冷え込む中、各地で交流行事が中止となっているが、対馬市職員は「対馬での交流が先例となり負の連鎖を止めることができれば」と話している。

 朝鮮通信使の派遣は室町時代に始まったが、豊臣秀吉の朝鮮出兵で断絶。対馬藩が朝鮮王朝と江戸幕府との関係修復に奔走し、1607年から1811年まで計12回送られた。行列イベントは「対馬厳原港まつり」の一環。厳原町の住民らが1980年に始めた。

 今回は当初、韓国の国立海洋文化財研究所が復元した「朝鮮通信使船」の来航や、釜山市影島(ヨンド)区からの公式訪問が予定されていたが、いずれも中止となった。 一方、釜山市の民間舞踊団や、青少年でつくる宮廷音楽の吹打(すいだ)隊ら約50人は来島。厳原港から対馬藩主の菩提(ぼだい)寺「万松院」までの約1.5キロを、対馬藩士らに扮(ふん)した市民約250人とともに練り歩いた。

 万松院では、宗対馬守(そうつしまのかみ)役の山口勝・陸上自衛隊対馬駐屯地司令(46)が「平和の遺産である朝鮮通信使の『誠信交隣』の精神を世界に広げよう」と述べ、通信使正使役の南松祐(ナムソンウ)・釜山文化財団元代表理事(65)も「(日韓両国の)文化交流は続けるべきだ」と応じ“国書”を交換した。

 厳原町の住民らでつくる朝鮮通信使行列振興会の神宮保夫会長(54)は「例年と変わらず観客も大勢おり、にぎわった。お互いの文化を理解することが大切」と話した。

“国書”を交換し、握手をする宗対馬守役の山口司令(左)と、正使役の南元代表理事=対馬市厳原町、万松院