男児の成長 石塔に祈願 対馬の伝統「木坂・青海のヤクマ」守り継ぐ

2019/07/09 [00:01] 公開

海岸の石を積み重ねてつくった「ヤクマの塔」に向かって手を合わせる木坂地区の住民=対馬市峰町

 長崎県対馬市中部西岸にある峰町の木坂、青海(おうみ)両地区で8日、海岸の石を積み重ねて円すい形の石塔をつくり、男児の健やかな成長や家内安全などを祈願する伝統行事「木坂・青海のヤクマ」(ヤクマ祭)があった。

 市教委や峰町誌などによると、「ヤクマ」は旧暦6月の初午(はつうま)の日を指す。祭りは、太陽を神格化した「天道(てんどう)信仰」に由来しており、2012年に「わが国の民間信仰を考える上でも注目される」として、国の選択無形民俗文化財となった。

 今年は7月8日が旧暦6月で初めての午の日で、午前中に青海、午後に木坂で祭りがあった。

 このうち、木坂では午後0時半ごろ、同地区の島屋哲男区長(70)と島井利和副区長(72)が、地元の海神(かいじん)神社境内にある天道神のほこらに参拝。その後、ほかの地区住民8人とともに御前(おまえ)浜と呼ばれる神社前の海岸に集まり、石塔2基(各高さ約2メートル)の頂点に積まれた石「カラスイシ」(同約30センチ)に「お疲れさまでございました」と声をかけて新しい石と取り換え、再び手を合わせて祈った。

 島屋区長は「かつては男の子が生まれるたびに参拝の当番を誰にするかと話し合っていたが、近年は少子化で役員が務めるようになった。高齢化も進み、限界集落と言われるようになったが、この地域がある限り、祭りを続けていきたい」と話した。