国際公募アート未来展 被爆の実相表現し 最高賞獲得 

2019/07/01 [14:00] 公開

内閣総理大臣賞を受賞した林田さんの「黒い追憶~Reminiscence~」

 美術の公募団体アート未来(本部東京)主催の「第24回国際公募アート未来展」で、長崎原爆をテーマにした西彼長与町の林田薫さん(66)のミクストメディア絵画「黒い追憶~Reminiscence~」(F100号)が、最高賞の内閣総理大臣賞に輝いた。林田さんは「被爆の実相はいろいろな形で語り継がれているが、私は絵画で表した」と話している。
 ミクストメディアは複数の素材を用いた作品で、林田さんの作品は抽象画。らせん状の形が生命体のように大地にしっかりと根を張りながら上にも伸びていく様子を、アクリル絵の具と貼り絵を使い、表面を引っかくスクラッチ技法なども駆使して描いた。同展は絵画、彫刻、工芸の部で構成。国内外の応募作全251点から選ばれた。
 林田さんは元公立中学の美術教諭で、アート未来長崎支部長。小学低学年のころ、自宅に乳酸菌飲料を配達する中年男性から被爆当時の話をよく聞いたという。8月9日、原爆の閃光(せんこう)が走った瞬間、浦上川に飛び込んだことや城山周辺が火の海だったこと、黒焦げの女性と子ども、ひっくり返った電車-など。男性の被爆体験は幼かった林田さんの脳裏に焼きつき、年を重ねても忘れることのない“記憶”となった。
 被爆者が少なくなる中、林田さんは男性から受け継いだ被爆証言や思いを絵画で表現しようと決意。原爆は大きなテーマで、直接体験したことでもないため簡単ではなかったが、自分なりの方法で約2カ月をかけて完成させた。
 林田さんは「受賞をきっかけに、長崎で育った人間として、長崎や被爆にもっと関心を持ってもらえるような作品を描いていきたい」と話した。
 同展の本県関係は、絵画の部で石橋正道さん(大村市)が都知事賞、橋視代子さん(西彼時津町)が片柳賞、入選は6人。東京の国立新美術館で7月8日まで展示中。

 長崎県入選者(いずれも絵画の部)は次の通り。(敬称略)
 荒木知敏(長崎市)小淵晶乃(同)林田信代(同)加藤とき子(長与町)中村英樹(同)鶴崎智子(同)