諫干訴訟・最高裁決定 「闘いやめない」開門派 怒りあらわ

2019/06/28 [10:58] 公開

諫早湾干拓事業の北部排水門=2018年、諫早市

 長崎県諫早市小長井町などの漁業者が国営諫早湾干拓事業の潮受け堤防排水門の即時開門を求めるなどした2件の訴訟について、最高裁が漁業者の上告を退ける決定をしたことが明らかになった27日、開門派は「政府への忖度(そんたく)だ」と怒りをあらわにし、開門反対派からは「極めて重大な意義」と喜びの声が上がった。
 「国の和解案はのまない。闘いをやめる気もない」
 開門派弁護団の馬奈木昭雄弁護団長は、この2点を繰り返し強調した。
 これまでに国は開門せず総額100億円の基金創設で解決を図る和解案を示しているが、弁護団は一定レベルの開門を前提とした和解案と、和解への働き掛けを求める要請書を6日に最高裁に提出したばかり。7月には最高裁で請求異議訴訟の口頭弁論が開かれる。
 最高裁の判断について馬奈木団長は「全く無意味で意味が分からない。何でこのタイミングなのか」とばっさり。「国の基金案をのめということだろうが、われわれにとって何の利益もない」と反発し、漁業者や営農者によるさらなる訴訟提起も示唆した。「これで終わったと思ったら大間違いだ。(開門を求める)方針を変更する考えはいささかもない」
 開門派の漁業者からは司法に対する憤りの声が相次いだ。原告の諫早市小長井町の漁業者、松永秀則さん(65)は「国の方針に逆らわないという司法の姿勢に失望した。政府への忖度だ」と怒りをあらわにし、「司法は弱い人のためにあるべきだ。学校で習った『三権分立』は間違いだった」と声を震わせた。
 2010年の開門確定判決の原告で島原市有明町の漁業者、松本正明さん(67)は「7月の口頭弁論まで待つべきだった。漁業被害は今でも続いている」、同町の篠塚光信さん(60)は「開門請求権が消えるわけではない。これからも開門を求める姿勢は変わらない」と強調した。
 別の開門請求訴訟の原告で瑞穂漁協(雲仙市瑞穂町)の元組合長、石田徳春さん(82)は「有明海に真っ黒なヘドロが堆積した現状が、裁判官や国には理解できないのだろう」と口にした。