子どもの虫歯 家計と〝関係性〟 長崎県が生活実態調査

2019/06/05 [00:03] 公開

 長崎県が昨年初めて実施した「県子どもの生活に関する実態調査」によると、家計が赤字で借金をしている世帯では13.4%の子どもが虫歯を治療していなかった。家計が苦しい世帯ほど虫歯が多い傾向が浮き彫りになり、専門家は「デンタルネグレクト(歯の育児放棄)」と警鐘を鳴らしている。

 調査は、子どもの貧困対策を推進しようと昨年11~12月に実施。北松小値賀町を除く県内20市町から抽出した小学5年、中学2年の児童・生徒と保護者計約1万8千人から回答を得た。

 調査によると、小学5年の児童で治療していない虫歯があると答えた割合は、「黒字で余裕がある」世帯で3.3%、「どちらかというと黒字」の世帯で5.8%、「赤字でも黒字でもない」世帯で8.5%、「赤字で貯蓄を取り崩している」世帯で9.9%、「赤字で借金している」世帯で13.4%。家計が苦しい世帯ほど、虫歯を放置している子どもが多かった。

 治療中、または治療済みの虫歯があると回答した子どもも、赤字家計の世帯ほど多い。虫歯がないと答えた子どもの割合は、生活に余裕がある世帯ほど大きかった。これらの傾向は、中学2年の生徒についても同様だった。

 「毎日どのくらい歯磨きをするか」という質問には、相対的貧困世帯の小学5年の児童43.9%が「毎食後」と回答。相対的貧困でない世帯より9.8%少なく、家計と子どもの生活習慣の関係性も浮かび上がった。

 小児歯科に詳しい広島大大学院医系科学研究科の香西克之教授によると、ひとり親家庭などで保護者が生計を立てるのに必死で余裕がない場合、治療を見送るケースが多いという。特に、虫歯があっても保護者の無関心などで子どもが治療を受けられない状態は「デンタルネグレクト(歯の育児放棄)」と呼ばれている。

 香西教授は「残念ながら経済格差が健康の格差となって表れている。学校歯科医が検診などで子どもに目を配り、場合によっては専門機関と連携する必要もある」と助言する。

 4~10日は歯と口の健康週間。