諫早で刃物男?目撃 不審者情報 どう伝えるか 範囲や迅速さに課題

2019/05/30 [10:14] 公開

諫早市での不審者情報を巡り、住民への情報伝達について課題が浮かんだ(写真は加工しています)

 川崎市の児童殺傷事件が発生した28日の夕、長崎県諫早市小川町の路上で「刃物のようなものを持った男」との目撃情報があった。諫早市教委と諫早市、長崎県警はそれぞれ、保護者らが登録するメール配信サービスや防災行政無線などで注意を呼び掛けたが、登録していない高齢者らに届きにくい状況が生じた。不審者情報をどの範囲でどこまで迅速に知らせるか、関係機関も苦慮している。

 近くの小学校周辺では29日早朝、警察官が巡回し保護者らも見守りを強化した。その後、不審者に関する情報はない。

 関係者の話を総合すると、小学高学年の児童が28日午後4時50分ごろに「刃物のようなものを持った男が歩いていた」のを見たと家族に報告。家族が5時10分すぎ、小学校と交番に通報した。学校から連絡を受けた諫早市教委は5時40分ごろ、事前登録している同校保護者に諫早市スクールネットのメールで連絡。6時50分ごろ、諫早市スクールネット登録者約1万6千人すべてに流した。長崎県警もほぼ同時刻に登録者向けの「安心メール・キャッチくん」に配信した。

 諫早市は防災行政無線で7時50分ごろ放送した。諫早市と諫早署は2017年8月、防犯情報を無線で放送する覚書を締結しており、諫早署からの要請文書が7時ごろ届き、50分後に放送した。

 息子がこの小学校に通う母親(39)は「子どもが多い地域だけに、ささいなことでも心配。近くに住む高齢の両親は情報を知らず、メールを見て『気を付けて』と急いで連絡した」と話す。当面は登下校に付き添うという。学校近くに住む80代男性は「放送は気付かなかったし、どこからも連絡はない」と驚きの声を上げた。

 諫早市によると、覚書に基づく無線放送はこれまで7件。行方不明者情報や特殊詐欺被害への注意を呼び掛ける内容で、屋外で凶器を持つ不審者情報は初めて。無線以外の不審者情報を伝える方法は防災メールやホームページなどがあるが、パソコンやスマートフォンなどの機器を持っていない高齢者や障害者らへの伝達手段はない。

 関係機関が市民の不安を増幅させない配慮をする一方で、情報の精度と対応の迅速性を見極める難しさに苦慮する様子もうかがえた。諫早市は「無線放送後、市民の問い合わせを想定し、市教委に詳しい内容を確認したり、放送エリアを市全域か一部にするか、検討したりした」と説明する。今後、情報伝達の“格差”是正に向け、関係部署と連絡体制を再検討するという。

 諫早市教委は29日、市内学校に登下校時の児童生徒の安全確保の強化を通知し、見守り対策を継続する。