70代夫婦が五島に移住、農業に挑戦! 豆や菊芋などを無農薬で栽培「必要な人に届けたい」 長崎

長崎新聞 2025/08/08 [12:20] 公開

「農業を始めて、お互いをより気遣えるようになった」と話す松本さん夫婦=五島市籠淵町

「農業を始めて、お互いをより気遣えるようになった」と話す松本さん夫婦=五島市籠淵町

  • 「農業を始めて、お互いをより気遣えるようになった」と話す松本さん夫婦=五島市籠淵町
  • 加工したムクナ豆きな粉や菊芋チップ、真菰(まこも)茶
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長崎県五島市吉田町に暮らす松本和人さん(77)と妻文子さん(76)は2021年に長崎市から移住し、未経験だった農業を始めた。無農薬で育てたムクナ豆や菊芋を加工・販売し、一部はふるさと納税の返礼品にも採用。70代で移住・就農という異色の歩みが地域に元気をもたらしている。
 医療機器の販売をしていた和人さんは坂や階段の多い長崎の暮らしに負担を感じ、「階段の少ない島」として五島に着目。一方、中学まで五島で育った文子さんは古里に親族がおらず、島に戻る気はなかったが、夫の意志に背中を押され、移住を決めた。
 移住から間もなく、和人さんが脳梗塞を2度発症。後遺症はなかったが体調不良が続いた。そんな時に出合ったのがムクナ豆。インド原産のマメ科植物で、日本では八升豆とも呼ばれ、健康に良いとされる。試すうちに体調が回復し、「自分で作ろう」と畑を借りた。
 農業は初めてだったが、夫婦で力を合わせ、ムクナ豆や菊芋、マコモも無農薬で栽培。「五島列島・自然のめぐみ」というブランドを立ち上げ、豆はきな粉状に、菊芋はチップに加工するなど商品開発にも取り組んでいる。
 商品は自宅で手作りし、直売所で販売。「加工までやれば付加価値が生まれる。ほかの農家の参考にもなれば」と和人さん。収益確保と地域農業の新たなモデルづくりを目指す。
 現在はビニールハウス7棟のうち3棟を活用。残り4棟は有機農法に取り組む仲間に貸して耕作放棄地の再生にも一役買っている。和人さんの回復に驚いた人たちが「ムクナ豆を作りたい」と栽培を始め、仲間も少しずつ増えている。
 菊芋は、ふるさと納税返礼品として販売中。ムクナ豆も申請中で、登録が認められれば取り扱いが始まる見込みだ。「まさかこんな形で就農するとは思わなかった。でも、体も心も元気をもらった豆だから、必要な人に届けたい」と語る2人。五島の自然と食材、そして夫婦の歩みが重なり、第二の人生が静かに花開こうとしている。