長崎原爆資料館リニューアル 平和案内人、ARに期待 体験型「怖さ」への懸念も

長崎新聞 2026/03/13 [10:40] 公開

リニューアルで実物大の原爆模型などが展示されるCコーナーの一部(長崎市提供)

リニューアルで実物大の原爆模型などが展示されるCコーナーの一部(長崎市提供)

  • リニューアルで実物大の原爆模型などが展示されるCコーナーの一部(長崎市提供)
  • 来館者に被爆の実相を伝える永田さん(左)と杉本さん=長崎市、長崎原爆資料館
大きい写真を見る
4月に開館30年を迎える長崎市の長崎原爆資料館。国際情勢など時代の変化に応じて展示を見直そうと、市などが協議を進めている。リニューアルオープンは来年3月を予定。実施設計の最終案によると、来館者がデジタル技術などを活用して主体的に学ぶ展示も増える見通し。ボランティアガイドを務める長崎平和推進協会の平和案内人は、来館者と展示の“架け橋”として、展示更新に期待する一方、懸念も示している。

 常設展示室はA~Dの4コーナーで構成。市によると、展示更新は戦争と核なき世界に関するCコーナー、ビデオルームのDコーナーを中心に実施する。「原爆被害を今の自分にも起こり得ることとして受け止め、自ら平和を考え行動につなげる資料館」を目指す。

■分かりやすさ

 Cコーナーの入り口には、史上初の核実験で使用された原爆「ガジェット」の実物大模型を設置し、核兵器の開発や使用に至った背景など「核の時代」の幕開けを説明。拡張現実(AR)技術を使ってデジタル端末を模型にかざすと、原爆がさく裂する仕組みをアニメーションで見ることができるようにする。
 平和案内人を20年以上務める杉本恭子さん(74)は来館者から核分裂の仕組みを聞かれることもあり、その都度、言葉や身ぶりで説明するが「どれほど伝わっているかは分からない」。ARの活用で「これくらいのプルトニウムが一つの街を破壊するということが、今より理解しやすくなれば」と望む。
 一方、核実験映像を用いた没入体験型展示の導入は「写真でさえ見たくないと通り過ぎる子どもには怖くないか」と懸念する。市の担当者はこれについて、人が映り込んだ映像ではないとした上で「トラウマ(心的外傷)にならないような映像の選定に努める」とし、「核兵器がある世界に生きていることを身近に考えてほしい」と話す。

■在り方を模索

 Cコーナーの終盤は、爆心地周辺の復興をたどるジオラマを展示する計画で、ARを活用すると、▽被爆直後▽被爆から10年後▽現在-の街並みを写真や映像で比べることができる。
 永田優樹さん(43)は約2年間、同館の常駐ガイドとして活動。Bコーナーの原爆被害を示すジオラマに見入ったり、復興した長崎の歩みに関心を持ったりする来館者は多いという。新しいジオラマについても「80年前の恐ろしさ、復興した長崎の力や人の思いを伝えやすくなるのでは」と期待を寄せる。
 Dコーナーは来館者が平和の思いを共有できるメッセージコーナーを新設。2人はガイド終盤、緊迫した世界の核情勢を伝えており、永田さんは「核兵器がいつ使われるか分からない中、今の自分に何ができるかを書いてほしい」と願う。
 リニューアル計画に来館者が体感して発信する展示が加わり、平和案内人もガイドの在り方を模索している。杉本さんは「対話を通した気づきも多い。見るだけでは足りない部分を私たちの言葉で補いたい」。永田さんはリニューアルに対応するための研修を期待し「自分の言葉で新しい内容をしっかり伝えられるよう学びたい」と意欲を見せた。