「互い認め合う地域を」 外国人との違い

2019/04/02 [13:59] 公開

「地域のサッカーチームに入って長崎の人と一緒に楽しみたい」と語るア・ハマドさん=長崎市、ハンハリーリ

 「過激派組織イスラム国(IS)の拉致、殺害事件が報じられ、イスラム教は怖い宗教だと誤解を招いているのではと心配。平和を大切にする宗教だということを分かってほしい」
 長崎市銀屋町でエジプト雑貨の店「ハンハリーリ」を営むエジプト人、ア・ハマド・フセインさん(33)。2012年、エジプトの首都カイロで長崎市出身の梓乃(しの)さんと出会い、結婚。14年に同市に引っ越してきた。4月に第1子が生まれる予定。「自分の家族が増えることが何よりの幸せ」
 来日して4年半。ア・ハマドさんらイスラム教信者は1日5回、祈りをささげる。安息日の金曜日には20人ほどの信者らで市内に集まり、一緒に祈っている。
 文化の違いは日々、肌で感じている。当初、戸惑ったのは食事。イスラム教の厳しい戒律に従って調理加工された「ハラール食品」を扱う店が見当たらず、インターネットで注文していた。その後「ハラール認証」食材を販売する店を見つけ、そこで購入している。
 「日本語は一生懸命学んでいる。しかし教材は英語、中国語、韓国語圏の人向けはあってもアラビア語のものは、なかなかない」。市内では母国語の観光案内板を見掛けたことがなく、図書館や市内の書店にも母国語の本はほとんどない。

 法務省在留外国人統計などによると1985年、県内に住む外国人は約3400人。2018年には約1万人まで増加した。改正入管難民法の4月施行でさらに増えるのは確実とみられる。18年を国籍・地域別にみると、県内最多は中国の約2500人でベトナム、フィリピン、韓国と続く。エジプト人は20人だが、多国籍化は年々進んでいる。
 県は受け入れ環境を整えるため、長崎市内に県外国人総合相談ワンストップセンター(仮称)を7月に設置し対面相談や、多言語コールセンターを活用した電話相談などを始める予定。国の外国人受け入れ環境整備交付金事業要領では、英、中、韓のほかベトナム語、ネパール語など原則11言語以上の多言語で相談を行うよう定めている。11言語に含まないアラビア語など少数派の言語対応が課題となる。

 ア・ハマドさんは、市内のエジプト人やアルジェリア人、スーダン人ら言葉が通じる人と固まりがち。でも日本語が上達するにつれて、日本人の友人も少しずつ増えてきた。
 日本に暮らし続ける上で言語と宗教の問題はずっと付きまとう。今願っているのは、資金を出し合うなどして長崎市内にモスク(イスラム教礼拝所)を建てること。「モスクは私たち信者が幸福を感じるために欠かせない。同時に信仰への周囲の理解が深まれば、もっと互いに認め合う地域を築いていけるのではないでしょうか」