最後の鮮魚店5日閉店  長与中央市場 40年の歴史に幕 

2019/04/05 [11:08] 公開

客と会話しながら営業を続けてきた中野鮮魚=長与中央市場

 西彼長与町嬉里郷の長与中央市場で、唯一営業を続けていた「中野鮮魚」が5日、閉店する。かつて町民の“台所”として親しまれた市場は今後解体され、昭和、平成と続いた約40年の歴史に幕を下ろす。
 同市場は1979年オープン。約50メートルの通路の両側に11店舗が並んだ。今では姿を消した近隣の市場やスーパーなどと共に、一帯のにぎわいの中心となっていた。昨年まで中野鮮魚のほか、菓子店と青果店も営業していたが、設備老朽化に伴い市場の解体が決まり、3月上旬から同鮮魚だけになっていた。
 「刺し身は何ばしようかね」。店長の栁原克宏さん(55)が尋ねると、常連の女性客は「何でもよかよ」とお任せ。空きスペースに腰掛け、栁原さんの妻尚子さん(51)が入れてきたコーヒーを飲みながら世間話に花を咲かせた。同町高田郷の女性(72)は「ご主人との会話が楽しい。ここで友達になった人もいる」と別れを惜しむ。
 栁原さんは二十数年前から中野鮮魚で働き始め、11年前に亡くなった先代社長の後を継いだ。「先代にかわいがってもらって一人前になれた」と懐かしむ。周りから「寂しかねー」と声を掛けてもらうことも多い。店は嬉里郷内に移転し、「克水産」と改名して今月中旬から営業する。「時代の流れかな。寂しさに浸る場合じゃない」と前を向いた。

約40年の歴史に幕を下ろす長与中央市場