激戦区を歩く 2019 県議選(3) 五島市区(定数一-2人)

2019/04/03 [10:11] 公開

出陣式で候補者と気勢を上げる支持者ら=五島市内

 長崎県内で唯一、自民の現職県議がいない五島市区。“空白地帯”となって13年になる。端緒となった2006年の県議補選を争った2人が今回、因縁の激しい一騎打ちを演じている。
 「最初の選挙を考えてください。当時いた市会議員が、今はいません」。告示日の3月29日、無所属現職の山田博司候補の出陣式。後援会長が支持者を前に危機感をあらわにした。前回まで山田陣営で動いた市議数人が、「いろいろな主義主張」(同陣営)から今回は離れたからだ。集票や動員への影響が避けられないとの見方もある。
 だが、後援会長は続けた。「マイナスのスタートだが気持ちを一つにすれば勝てる」。“逆境”をはね返せとばかりに、支持者からは熱のこもった拍手が湧いた。山田候補の強みは、地道な地域回りに裏打ちされた強固な個人票。本人も「今では小中学生から要望を受ける」と、県議4期で築いた実績と知名度の高さに揺るぎない自信を見せる。
 昨秋、次期衆院選への出馬意向を表明した山田候補。支持者からは県議選への戸惑いも聞かれ、陣営は後援会幹部らを集めて「県議選に全力を挙げる」と火消しに躍起になった。内部には「県議選前に表明したのはまずい」と不安視する声もあるが、山田候補は「(地域を)回って影響は感じない」と一蹴する。
 一方、雪辱を誓う自民新人の林睦浩候補。街頭演説で、応援に駆け付けた金子原二郎参院議員と野口市太郎市長の間に立ち、自らに言い聞かせるように力を込めた。「国と市、この真ん中に自民県議がいなければいけないんです」。13年前に自身が45票差で敗れて以来、これまで県議選のたびに、挙党態勢で臨みながら、自民候補が苦杯をなめ続けてきたことへの負い目がある。地元出身の谷川弥一衆院議員は「ずっと五島のためにやってきたが、なぜか4回も足を払われた」とぼやく。
 今回、林陣営が度々強調するのは政権与党との「パイプ」復活だ。17年施行の国境離島新法による運賃低廉化など、自民政治の“恩恵”とその継続を訴える。市議も経験し、13年前とは知名度も異なる。
 それでも厳しい状況は変わらない。今回も自公の友好市議団が支えるが、ある市議は「支持者から『市議はあんたでも、県議は違う』と言われる」と明かす。自民や支持団体が持つ票の行方が不透明な中、林候補は「同じ過ちは許されない」として組織戦に加え、若手・中堅による草の根での支持拡大にも力を注ぐ。
 続投か、雪辱か-。両陣営が有権者の動きを読み切れぬまま、1票を懸けた激しい戦いが続いている。

◎立候補者 

(届け出順)
山田 博司 48 無現 (4)
林  睦浩 50 自新