タコつぼの貝殻落とし器具を発明 大瀬戸の岳野さん

2019/03/17 [00:03] 公開

 長崎県内でも有数のマダコの産地、長崎県西海市大瀬戸町。漁に使うタコつぼの内部に付いた貝殻を素早く取り除く器具を、同町の岳野建治さん(70)が発明した。漁業者たちは「作業時間が減った」「効率的だ」と喜んでいる。

発明した器具を前に「みなさんに使ってもらえてうれしい」と話す岳野さん

 開発したのは、柔軟性がある金属製ワイヤやばねなどを組み合わせた「付着物除去器」。市販の電気ドリルに取り付け、つぼの中で回転させ貝殻をたたき落とす仕組み。

 岳野さんは大阪の電子機器メーカーを退職後、2010年、故郷の大瀬戸にUターン。知人の作業を手伝い、貝殻をヘラでこそぎ落とす作業を続けるうちに「楽にできる方法はないか」と開発に着手。漁業者の要望を取り入れながら、現在の形にたどり着き、16年11月に特許を出願。漁業者たちに口コミで広まった。

 地元の大瀬戸町漁協のタコ漁期は4~9月、つぼは五島灘の漁場に投入する。昨年は約60トンを収穫した。つぼには昔ながらの素焼きと、タコが入ると、ふたが閉まるプラスチック製の「ぱったん」の2種類ある。貝殻落としはタコの入りをよくし、出漁時のけがを防ぐために必要で、家族総出で行うところもあった。

電気ドリルの先に付けた除去器を使ってタコつぼ内部の貝殻を落とす漁業者=西海市大瀬戸町

 同漁協タコ部会長の道脇亨さん(63)によると、つぼ内部については、1個当たり数分の作業が、電気ドリルを出し入れするだけのわずかな時間に短縮された。つぼ表面の手作業は残るが、約2千個に45日程度かかっていた日数は、20日ほどに減った。道脇さんは「これを使う前は気が重かった。面白いように貝殻がとれる」と太鼓判を押す。17人の部会員のほとんどが導入したという。漁業者たちは器具の形やブランド名「ゑべす蛸」にちなみ「ぶんぶん」や「ゑべす1号」と呼び愛用している。

 岳野さんは「みなさんの役に立ててうれしい。機械化で新たな時間も生まれる。漁業の発展や、後継者誕生のきっかけになれば」と笑顔を見せた。

びっしり貝殻が付いた作業前のタコつぼ(左)と作業後のタコつぼ