佐世保市営バス元ガイドが同窓会 今月末で歴史に幕

2019/03/12 [00:09] 公開

 “市バス乙女”が思い出の場所にお別れ-。3月末で廃止になる長崎県の佐世保市交通局(市営バス)の元バスガイドらが9日、市内で同窓会を開いた。市内外の50~70代の35人が集合。再会を喜び、ガイドの技を磨き合った職場に思いをはせた。
 9日正午。クリーム色のバスが次々と出て行く市交通局駅前営業所(白南風町)に、にぎやかな笑い声が響いた。女性たちは、久々に会う同期と手を握り合ったり、手作りの制服のレプリカに驚いたり。「発車、オーライ」。慣れ親しんだせりふに合わせ、白い手袋をはめた手を掲げて記念写真に収まった。
 市交通局は1950年に貸し切りバス事業を開始。小中学生の修学旅行や九州、四国・中国方面のバスツアーに同行していた。バスガイドが乗務する運行は88年に終了。利用者の減少や運転士確保の難しさなどから、本年度で市営バスは運行を終えることに。仲間とともに職場の最後を見届けようと、元ガイドの山口美都子さん(64)が同窓会を企画した。
 「青春が詰まった場所」。長崎市から駆けつけた三根明美さん(56)は、修学旅行のガイドに憧れて就職。おしゃべりは苦手だったため、車内の場をつなぐために新聞を何紙も読んで話題をかき集めた。一方、修学旅行生のお礼の手紙に励まされたり、仕事外で仲間と登山に出かけたりなど心が躍る思い出もたくさんできた。「なくなるのは寂しい」。そう車庫と建物を見つめた。
 ガイドの育成に力を注いだ人も参加した。山下雅子さん(79)=谷郷町=はガイドと指導役の二足のわらじで勤務。日中の業務に加えて観光案内の原稿も手掛け、深夜まで働くこともあったが「苦ではなかった。好きだったから」。
 乗客の安全を第一に守ること、乗客を喜ばせる仕事をすること-。同窓会ではガイドの心得を伝えてきた教え子たちに“先生”と呼ばれ、涙が出た。「人生を懸けた場所だが、なくなるのは仕方がない」と山下さん。「娘のようにかわいい子たち。いつまでも元気に暮らしてほしい」と話した。

思い出が詰まった市交通局の看板の前で記念撮影をする元ガイドら=佐世保市、市交通局駅前営業所