モモの花ハウスに甘い香り 火砕流被災の「福島農園」

2019/03/06 [00:02] 公開

 雲仙・普賢岳噴火災害の大火砕流から再建した長崎県南島原市深江町の「福島農園」で、モモの花が見ごろ。かれんな花から漂う甘い香りがビニールハウス内を包んでいる。暖冬の影響で例年より遅い2月下旬に開花。今月20日ごろまで花を楽しめそう。
 15棟計約4500平方メートルのハウスにはモモの品種「ちよひめ」「日川白鳳(はくほう)」の計約250本が植えられている。果実は5月下旬から収穫し、関東など大消費地向けに出荷するほか、個人向け販売もしている。
 農園の代表、福島敏郎さん(70)一家はこの地で葉タバコ栽培や畜産を営んでいたが、1991年9月15日の大火砕流で自宅や畑、牛舎を焼失。仮設住宅での避難生活を強いられた。96年に自宅を再建し2001年から家族でモモ栽培をスタート。「生産者の顔が見える農園に」と、16年からハウスを無料で一般公開している。
 長男で、後継ぎの慎司さん(41)は「山が暴れ、暮らしを一変させられた苦しみは忘れない。でも火山灰質でミネラル豊富な土壌が作物に恩恵を与えるのも確か。せっかくならそれを生かし、今年も全国においしいモモを届けたい」と話す。将来は出店者を募り、花の季節にハウス内でワークショップなどの催しも開きたいと希望を語る。
 ハウスは被災遺構の旧大野木場小近く。椅子やテーブルを置き、弁当持参の花見やピクニックができるほか、モモジャムなどの物販もある。開花状況はフェイスブックやインスタグラムなどで更新中。問い合わせは福島農園(電090.2858.3601)。

花の付き方を確認し、妻の小夜子さんと談笑する福島慎司さん=南島原市深江町