入院児 アート楽しむ 美術講師、重野さん企画

2019/03/02 [00:05] 公開

 長崎精道中の非常勤美術講師、重野裕美さん(54)が、長崎大学病院(長崎市)に入院する子どもたちに楽しんでもらおうと、小児科病棟プレイルームで月1回、アート作品作りの場を提供している。だが夫の海外転勤に伴い今春長崎を離れるため、重野さんが企画するのは2月27日が最後となった。思い出が詰まった場所との別れを惜しみつつ、子どもたちと粘土細工に取り組んだ。
 入院生活でさまざまな活動が制限される子どもたちに、アート作品作りを通して主体性を養ってもらおうと企画し、2017年5月から実施。それ以外の時でも子どもたちが制作できるよう、長崎精道小中の児童生徒にボランティアで材料や道具の準備をしてもらい、プレイルームに置いた。
 27日は色とりどりの粘土を使った。参加した田中杏奈さん(10)は粘土をこねたり重ねたりして、型枠で星やハートなどの形にくりぬいた。断面にカラフルな層が見えると「サンドイッチみたい」と言って笑った。重野さんも杏奈さんの手元で次々と形を変える粘土を見ながら「アーティストの作品のよう。すごい」と褒めた。
 重野さんは約2年間の活動を振り返り「薬の影響で元気がなかった子どもが制作するうちに目が生き生きとしてきたこともあった。お母さんたちも喜んでくれた。退院して会えなくなるのは寂しかったが、自分の作品を持ち帰ってくれるのを見てうれしかった」と話す。さらに「ボランティアの児童生徒も準備した道具や材料が喜ばれていると知り、予想以上に意欲的に取り組んだ」と言う。
 今後は、重野さんの友人が引き継ぐという。重野さんは「子どもたちが楽しめる時間がこれからもっと増えてほしい」と話した。

杏奈さん(右)と粘土細工を楽しむ重野さん=長崎市坂本1丁目、長崎大学病院