【平成の長崎】佐藤正午さんに直木賞 佐世保在住、長崎県関係30年ぶり

2019/03/08 [00:00] 公開

 第157回芥川賞、直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が7月19日、東京・築地の料亭「新喜楽」で開かれ、直木賞に長崎県佐世保市在住の佐藤正午さん(61)の「月の満ち欠け」(岩波書店)が選ばれた。長崎県関係の直木賞受賞者は、第36回の穂積驚(ほづみみはる)さん、第97回の白石一郎さん=いずれも故人=に次いで30年ぶり、3人目。

 芥川賞は、沼田真佑さん(38)の「影裏(えいり)」(文学界5月号)に決まった。

 佐藤さんは1955年、佐世保市生まれ。佐世保北高卒。北海道大文学部中退後、古里佐世保に戻り小説を執筆。諫早に根差した作家、野呂邦暢さんらの影響を受けた。83年に「永遠の1/2」で第7回すばる文学賞を受け、デビュー。ベストセラーとなった「ジャンプ」「Y」をはじめ、「5」「身の上話」「小説家の四季」など多数の著書がある。2,015年「鳩の撃退法」で第6回山田風太郎賞を受賞した。

 受賞作は生まれ変わりを題材に、時空を超えた男女の究極の愛を描いた。「あたしは、月のように死んで、生まれ変わる-」。女性の深い愛が切ない。選考委員の北方謙三さんは、「三十数年のキャリアを積みながら、文章がみずみずしさを失っていない。文章の力が抜きんでている」と話した。

 佐藤さんは佐世保市内で受賞の知らせを受けた。「編集者に恵まれ、マイペースで書いてこられた。60歳を過ぎているので、変わりようがなく、これまで通り書いていくと思う。今まで出合わなかった直木賞に呼び止められて、『今?』という感じがした」と喜びを語った。

 贈呈式は8月下旬に東京都内のホテルで開かれる。賞金は各100万円。
(平成29年7月20日付長崎新聞より)
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【平成の長崎】は長崎県内の平成30年間を写真で振り返る特別企画です。

「月の満ち欠け」刊行を記念して開いたサイン会で女性のファンらに囲まれる佐藤さん(前列中央)=4月15日、佐世保市本島町、くまざわ書店佐世保店