聴覚にハンディのある33歳家具職人、全国技能大会で銀賞を獲得…「質に妥協しない」がこだわり 長崎

長崎新聞 2026/03/28 [12:00] 公開

工場で作業に打ち込む田中さん=長崎船舶装備長崎工場

工場で作業に打ち込む田中さん=長崎船舶装備長崎工場

  • 工場で作業に打ち込む田中さん=長崎船舶装備長崎工場
  • 技能競技大会の課題作品の前で、銀賞のメダルを手にする田中さん=県庁
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聴覚にハンディのある長崎市の家具職人、田中匠貴さん(33)が本年度の全国障害者技能競技大会で「銀賞」を獲得した。市内の企業に勤め、船舶などに取り付ける家具や建具を日々製作している。「とにかく真面目で、作業が細かく慎重なタイプ」。細部にこだわる丁寧な仕事ぶりは、上司からそう評される。

 今月上旬、長崎船舶装備長崎工場(香焼町)。木材の香りが漂う中に、黙々と作業する田中さんの姿があった。

 その日作っていたのは、貨物船に設置するトイレのドア。木板を電動工具やのみで削り、できた穴に隙間なくドアノブの金具をはめ込む。傍らで作業を見つめていた石山誉工場長(42)が言った。「何げないところに差が出る。きれいに、スカッとはまってますよ」

 田中さんは西海市出身。地元小中学校、佐世保実業高(佐世保市)を卒業後、20歳までの2年間は県立ろう学校(大村市)で木材加工技術を学んだ。

 幼い頃から鳥の巣箱を作るなど工作に興味があり、本格的に家具職人を志したのはろう学校時代。その後23歳まで坂元木工工芸(佐世保市)で働き、現在の長崎船舶装備に勤めて8年になる。これまでに手がけた中でも、今月開館する別府市立図書館(大分県)のカフェカウンターは「とても難しかった」だけに、思い出深い仕事だ。

 職場でのコミュニケーションは、さまざまな方法を組み合わせる。手話、読唇術、筆談、ボディーランゲージ…。簡単な手話ができる同僚も複数いて「あまり困らない」と田中さん。ただ一般的には、電動工具の調子や刃物の切れ味などの異変は「音」で察知することが少なくない。それが難しい田中さんは、微妙な振動の違いを感じ取ったり、目視を徹底したりして補っているという。

 今回の銀賞受賞で、昨年度大会の銅賞からランクアップした。家具種目は5時間半で「花台」を図面通りに作る。田中さんは事前公表された課題を職場で反復練習。業務後の居残り練習だけでは時間が足りず、会社のサポートで終業を1時間ほど早めて練習時間を確保することもあった。

 次回大会での目標は「金賞」。将来的には、家具製作で技能検定1級の取得も目指す。職人としてのこだわりは-。「自分が納得するまで、家具の質において妥協しないこと」。小さくも丁寧な字で、手元の紙にそうつづった。