「カニは2億年前から横歩き」長崎大チームが研究、進化を検証 国際学術誌で評価

長崎新聞 2026/05/01 [12:15] 公開

調査で使ったカニを観察する河端准教授=長崎市文教町、長崎大

調査で使ったカニを観察する河端准教授=長崎市文教町、長崎大

  • 調査で使ったカニを観察する河端准教授=長崎市文教町、長崎大
  • カニの歩き方の進化を示した系統樹。赤が「前歩き」種、青が「横歩き」種(河端准教授提供)
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もともと前向きに歩いていたカニが「横歩き」するようになったのは約2億年前から、とする研究結果を長崎大大学院総合生産科学研究科の河端雄毅准教授(魚類行動学)らの研究チームがまとめた。生物の移動様式の進化や種の多様化を理解する上で重要な知見と国際的な学術誌で評価されている。

 調査では50種のカニを使い、生息環境を模した円形水槽の中での各個体の行動を10分間映像で撮影し、移動様式を分類。その結果、35種を「横歩き」、15種を「前歩き」と判定した。

 このデータを基にDNAなどの配列データを使って生物間の進化的な類縁関係を木のような図で表した最新の「分子系統樹」に当てはめた。祖先の移動様式を推定したところ、カニとヤドカリの共通祖先「メイウラ」が前歩きで直系の子孫も全て同様なのに対し、約2億年前に分化した「ユーブラキューラ」が突然横歩きを始め、その子孫のほとんどが横歩きになっていることが分かったという。

 河端氏は「横に動くのは生物として非常に珍しい行動」と強調。その上で「左右どちらにも素早く移動できることで、捕食者から逃避方向が予測されにくい利点があり、横歩きを獲得したことが生存、繁栄につながったのでは」とみる。現在のカニの生息状況がそのことを如実に示すと説明。河端氏によると、世界に生息する約7900種のうち「前歩き」のまま変わらないのは、アサヒガニなど原始的な約400種。残りの7500種近くは一度は「横歩き」に進化し、中には前歩きに戻った種もあるが、多くは横歩きで世界各地に分布している。

 また約2億年前は古代の超大陸「パンゲア」が分裂を始めた時期。大陸間に浅い海が広がるなどカニが繁栄しやすい環境に変化しており、横歩きという移動様式の変化と相まってカニ類が多様化したのではないかとみている。

 研究チームは河端氏の研究室のゼミ生を中心とした8人。研究結果は生命科学分野の国際学術誌「eLife」に4月21日に掲載され、「カニの横移動の進化を検証した世界的に貴重な研究」と評価された。今後は化石の情報や横歩きの利点を調べる実験などを組み合わせ、「横歩き」と「多様化」の関係性をさらに検証していく。