長崎市油屋町の一角にある4階建てビル。1階のガラス戸を引き、2人の旅行客が入ってくる。「お客さんですよ」。玄関近くに座る松尾茂子さん(84)が優しく声をかける。「ちょっとお待ちください。どうぞ座って」
茂子さんが“案内役”を務めるのは、ホテル兼カフェ「ksnowki(くすのき)」。2年半前、孫の綾さん(27)が開業した。かつて茂子さんの祖父母が営んでいた銭湯「楠木湯」を経て、茂子さん家族が慣れ親しんだ家をリニューアル。この土地で暮らして70年、変わりゆく町を見つめ、今は孫とホテル兼カフェを営む。
□ □ □
新地中華街に近い同市中新町出身。4人家族の末っ子として生まれた。銭湯だった現在の家に移ったのは小学4年の頃。高校卒業後、番台に座ることもしばしばあった。風呂がない家庭も珍しくなかった当時、多くの地元の人から親しまれ、約40年前に閉じた。
祖父が残してくれた土地ゆえに、銭湯だった空間の活用を考えあぐねていた。子ども時代から長年連れ添った亡き夫との生活まで、たくさんの思い出が詰まった場所。車庫にする案も出たが、そうするには惜しかった。
「ホテルとカフェを開きたい」-。そんな時、活用に手を挙げたのは綾さん。茂子さんは「ご先祖さまも喜んでくれるだろう」と首を縦に振った。居室だった2階から4階までをスタイリッシュな客室に改装し、1日3組のみを受け入れている。
茂子さんの仕事は利用客との「おしゃべり」。穏やかで気配り上手な人柄が、ほっとひと息つく安らぎを与える。「銭湯にお世話になっていた。そんな人が来ることもある」。昔を懐かしみ「こんなことがあったね」「そうでしたね」と話すことが楽しい。
夜明け前、茂子さんの1日が始まる。朝ご飯を済ませて、テレビを眺める。昔、家族と旅行した土地が映ると「あそこのご飯はおいしかった」「みんなで一つの車に乗って行ったのよね」と頬がゆるむ。新聞を読んだり、友人と電話をしたり。店に出る日は以前よりも減ったが、宿泊に使うタオルを洗濯して干すなど、陰で支える。日が暮れると、綾さんと一緒に晩ご飯を食べて、床に就く。
店名の「ksnowki」は祖父母が守った銭湯と、ホテル兼カフェの「くらすをのんきに」というコンセプトに由来する。茂子さんはのんびりと心地よい場所で訪れる人を温かく出迎える。「ゆっくり暮らしたい。穏やかに毎日を」
茂子さんが“案内役”を務めるのは、ホテル兼カフェ「ksnowki(くすのき)」。2年半前、孫の綾さん(27)が開業した。かつて茂子さんの祖父母が営んでいた銭湯「楠木湯」を経て、茂子さん家族が慣れ親しんだ家をリニューアル。この土地で暮らして70年、変わりゆく町を見つめ、今は孫とホテル兼カフェを営む。
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新地中華街に近い同市中新町出身。4人家族の末っ子として生まれた。銭湯だった現在の家に移ったのは小学4年の頃。高校卒業後、番台に座ることもしばしばあった。風呂がない家庭も珍しくなかった当時、多くの地元の人から親しまれ、約40年前に閉じた。
祖父が残してくれた土地ゆえに、銭湯だった空間の活用を考えあぐねていた。子ども時代から長年連れ添った亡き夫との生活まで、たくさんの思い出が詰まった場所。車庫にする案も出たが、そうするには惜しかった。
「ホテルとカフェを開きたい」-。そんな時、活用に手を挙げたのは綾さん。茂子さんは「ご先祖さまも喜んでくれるだろう」と首を縦に振った。居室だった2階から4階までをスタイリッシュな客室に改装し、1日3組のみを受け入れている。
茂子さんの仕事は利用客との「おしゃべり」。穏やかで気配り上手な人柄が、ほっとひと息つく安らぎを与える。「銭湯にお世話になっていた。そんな人が来ることもある」。昔を懐かしみ「こんなことがあったね」「そうでしたね」と話すことが楽しい。
夜明け前、茂子さんの1日が始まる。朝ご飯を済ませて、テレビを眺める。昔、家族と旅行した土地が映ると「あそこのご飯はおいしかった」「みんなで一つの車に乗って行ったのよね」と頬がゆるむ。新聞を読んだり、友人と電話をしたり。店に出る日は以前よりも減ったが、宿泊に使うタオルを洗濯して干すなど、陰で支える。日が暮れると、綾さんと一緒に晩ご飯を食べて、床に就く。
店名の「ksnowki」は祖父母が守った銭湯と、ホテル兼カフェの「くらすをのんきに」というコンセプトに由来する。茂子さんはのんびりと心地よい場所で訪れる人を温かく出迎える。「ゆっくり暮らしたい。穏やかに毎日を」



