長崎・石木ダム建設予定地の「団結小屋」 県が撤去要請へ…反対住民「体を張ってでも阻止」

長崎新聞 2025/09/30 [11:35] 公開

石木ダム建設反対闘争のシンボル「団結小屋」=東彼川棚町

石木ダム建設反対闘争のシンボル「団結小屋」=東彼川棚町

大きい写真を見る
長崎県と佐世保市が東彼川棚町で進める石木ダム建設事業で、県はダム本体(えん堤)の建設予定地にある「団結小屋」の撤去を反対住民に要請する方針を今月の定例県議会で明言。大石賢吾知事はこれに先立ち、一般質問で「支障となる物件の撤去について、県民を守る立場の知事として責任ある判断をしなければならない」と述べ、行政代執行の可能性を示唆した。団結小屋は反対運動のシンボルとも言え、住民は「体を張ってでも阻止する」と反発している。

 団結小屋は約40年前、抜き打ちで強制測量した県側の動きを見張るために反対住民らが建てた。トタン張りの外壁には「ダム絶対反対」「返り血も浴びる」などの看板が掲げられている。

 当初は住民が交代で寝泊まりして警戒。やがて平日の昼間に高齢女性10人前後が集うようになった。しかし現在は、その多くが亡くなり、支援者の応対やアトリエ、トイレなどで利用されている。

 ダムの完成時期は当初から遅れ、2032年度を予定。県によると、総事業費は420億円を見込み、進捗(しんちょく)率(事業費ベース)は52・3%=昨年度時点=。大石知事は8月下旬、宮島大典佐世保市長と波戸勇則川棚町長を伴い、工事現場を視察。報道陣に早期の完成を目指す姿勢を改めて示す一方、行政代執行による強制撤去については「最終手段」とした。

 「だから何だって言うんです」。半世紀近く反対運動を続けてきた岩永正さん(74)は、鋭いまなざしをダムの工事現場に向ける。

 岩永さんら反対住民の男性たち7人は、団結小屋の真向かいのビニールハウスでローテーションを組み、工事の監視を続けている。岩永さんは「自分も含め後期高齢者ばかり。体力的にきつい。それでも、孫が『じいちゃんの作った新米はおいしい』と喜んでくれる」と、古里での暮らしを守ることの意義を強調する。

 団結小屋撤去の要請があった場合、反対住民全体としてどう対応するかなどは議論していないと言うが、岩永さんは「知事にはやるなら、やってみろと言いたい。重機の下に潜り込んででも阻止する」と徹底抗戦の構えを崩さない。

 同じく70代の男性も「来春の知事選に向けた大石知事のパフォーマンス。話にならない」と一笑に付した。

 行政代執行の可能性について県側は、定例県議会での答弁で「可能性について問われれば、肯定も否定もしないという状況。13世帯の理解を得て、事業を進めることが最善との考えは変わらない」と従来の姿勢をあらためて述べている。