医療的ケア児へ「ぬりえ本」作製 長崎の美術家・重野さん 塗って誰かにプレゼントを

2023/03/06 [10:47] 公開

「塗り絵によるコミュニケーションを楽しんでもらえたら」と話す重野さん=長崎市三原2丁目、長崎精道小中

 長崎市の美術家で九州大総合研究博物館専門研究員の重野裕美さんが、医療的ケアが必要な子どもらに向けて「ぬりえブック」を作製した。塗り絵を楽しんだり、その絵を誰かにプレゼントしたりすることで子どもたちの自己肯定感や有用感を育むのが狙い。全国の子どもホスピスや病院に配布している。
 ぬりえブックは2種類。「1」はA4版、44ページ。「2」はB5変形版、40ページ。塗り絵のシールシートも付けている。
 線画は、重野さんが指導している長崎精道小中アートクラブの児童生徒に描いてもらったもので、絵柄は動物や昆虫、草花など多彩。オランダのファン・ゴッホ美術館が公開している「ひまわり」などゴッホ作品の塗り絵も掲載している。
 重野さんは県内の中学校などで美術教諭をしながら、子どものアート活動を推進しようとワークショップを開いたり、小児病棟を訪問したりしてきた。
 2019年から3年間、オランダに滞在する間には、新型コロナウイルス禍によるロックダウン(都市封鎖)を経験。人々のふれあいが制限され孤独感を強める中、市民が家庭でも美術に親しめるようにと現地の美術館はホームページで塗り絵などを公開していたという。
 「孤独になると自己肯定感が下がるといわれている。そういう意味では入院生活もコロナ禍も同じような状況にある」と重野さん。ぬりえブック専用のフェイスブックとインスタグラムのアカウントを作って、作品をアップすることもできるようにしており、「塗り絵によるコミュニケーションを楽しんでもらえたら」と話している。
 ぬりえブックは日本科学協会(東京)の「笹川科学研究助成」を受けて作製。希望者には先着で10人にプレゼントする。申し込みはメール(hiromi.tanaka313@gmail.com)で重野さんへ。

ぬりえブックの線画を描いた長崎精道小の児童。ケアが必要な子どもたちのことを思って、心を込めて描いたという(重野さん提供)