体に斑点、高熱と鼻血

県立長崎高女３年で１４歳。三菱兵器製作所大橋工場で、鹿児島県から動員された旧制第七高造士館（七高、現鹿児島大）生と共に魚雷の部品図面などを引く工作技術企画課で働いていた。８月９日も図面を引いていた。天井がピカッと光り、ピンクの甘いような風がほおをなでた。気が付いたら机の脚が折れて右足が下敷きになっていた。

外に出ると、男子学生が「（自分は）けがをしていないだろうか」と聞いてきた。その学生が背を向けた瞬間、右肩辺りの肉がぶらりと垂れ下がっていた。衝撃で言葉が出なかった。

馬車に積まれた工員用の弁当は全てひっくり返り、馬方は死んでいた。馬はくらが燃えているのに突っ立っていた。死んだ母親の胸元で、動いている赤ちゃんが見えた。

火が迫り鉄道の線路を越えて川に向かう途中、焼けただれた４～５歳くらいの真っ裸の女の子が「お姉ちゃん助けて」と言ってきたが、怖くて振りほどくようにして逃げた。川で友人数人と合流。そこで自分が足の裏と頭を切っていることに気付いた。川から出ると、七高生が「道ノ尾に行きなさい」と言う。友人と道ノ尾に逃げる途中、機銃掃射で体のすぐそばをダダダッと打たれ、生きた心地がしなかった。

銭座国民学校教頭の父は、大橋町の学校の田んぼで被爆したが無傷。立山町の自宅は瓦が飛び雨漏りがするため９月初旬、知人を頼り伊木力村に移った。数日後、父の体に紫の斑点が現れ、高熱と鼻血で寝たきりに。私にも斑点ができ、鼻血が止まらず、高熱、魚のはらわたのような物を吐くなどしてやせ細った。父は知人に自分と私の棺おけを用意させ、１６日に死んだ。３９歳だった。

１２月ごろ学校に戻り、友人宅を訪ねると「あの子は死にました。死体もありません」と言われた。生きていることに初めて後ろめたさを感じた。

＜私の願い＞

日本は「戦争はしない」と宣言しているから平和が保たれてきた。今の政治は他国からやられる前にやろうという方向に進んでいるようで、理解に苦しむ。世界各地で紛争が起きているが、片方を援助すればもう片方と敵対することになる。日本は国際社会の中で仲裁役を目指すべきだ。