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わたしたちの暮らしとエネルギー  ~エネルギーの「今」を考える~

 日々の暮らしに欠かせないエネルギーについてのトークセッション「わたしたちの暮らしとエネルギー~エネルギーの『今』を考える~」(長崎新聞社主催、九州経済産業局後援、九州電力協力)が昨年12月10日、長崎市茂里町の長崎新聞文化ホール・アストピアで開かれました。俳優で気象予報士の石原良純さんと、NPO法人国際環境経済研究所(東京)理事の竹内純子さんが自身の知識や経験を織り交ぜながら、エネルギーを取り巻く現状と問題点を語り合いました。

エネルギー

NPO法人国際環境経済研究所理事 竹内純子さん

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俳優・気象予報士 石原良純さん


●異常気象とエネルギー問題 

―気象予報士の石原さん。2017年の気象を振り返ってください。 

 石原 皆さんは、天気のニュースが増えたと実感しているのではないでしょうか。九州の方は7月の九州北部豪雨が特に印象に残っているでしょう。大雨自体は自然の営みですが、最近は異常気象が頻発しているように感じます。今までだったら崩れなかった山ののり面が崩れたりして、微妙な変化とは言えない状況となっています。人間社会に優しくない気象条件になってきていますね。

―竹内さんは気象で気になることがありますか。 

 竹内 私は、尾瀬の自然環境保護に長年取り組んできましたが、尾瀬では雪が減り、ニホンジカが入り込んで繁殖するようになりました。1990年代後半までは、尾瀬は雪が多すぎて、シカは住めないと言われていましたが、その後、あっという間に増えて、尾瀬の貴重な植物を食い荒らしています。そこで地球温暖化に関心を持つようになり、地球温暖化問題はエネルギー問題に深い関わりがあるということに気付きました。

―地球温暖化問題とエネルギー問題はどのようにつながるのでしょうか。

 竹内 実は日本で排出される温室効果ガスの約4割は、発電時に発生する二酸化炭素なのです。しかも、これが2010年以降大きく増えています。日本全体から出る二酸化炭素を減らそうと考えたら、やはり電気を作る際の二酸化炭素を減らしていかなければなりません。

エネルギー

●エネルギーを取り巻く現状 

―電気を作る際の二酸化炭素はなぜ増えているのですか。

 竹内 日本のエネルギー事情は、2011年3月11日の東日本大震災により大きく転換しました。震災前は、発電の約3割を原子力が担っていましたが、東京電力福島第1原子力発電所事故の後、全ての原子力発電所が止まってしまいました。そのため、石油や石炭、天然ガスといった化石燃料を燃やす火力発電所をフル稼働させて、結果として二酸化炭素の排出量が大幅に増加しました。化石燃料の輸入が増えたことで、震災前は20%前後だったエネルギー自給率は、今では7%まで落ちてしまいました。

 石原 朝のワイドショー番組に出演していますが、石油の供給元である中東の問題を取り上げても、視聴者の関心は薄いようです。遠い国の話だからでしょう。でも、最近の国際情勢を考えると、エネルギーの安定供給は当たり前じゃない時代になりつつあります。だから今考えなくてはいけないと思うんです。

―電気代のことも気になっています。

 竹内 化石燃料の輸入が増えたことで、電気料金も上がりました。一時は、家庭用で25%、産業用で40%まで上昇しました。モノづくりをしている中小企業には大きな負担です。電気料金高騰だけが理由ではありませんが、きっかけの一つとなり廃業を決めた企業もあるそうです。

―私たちはどういう視点でエネルギーのことを考えたらいいのですか。 

 竹内 日本のエネルギーを考える場合、安全性(Safety)を大前提に、安定供給(Energy security)、経済性(Economy)、環境適合(Environment)にも配慮しなければなりません。それぞれの英語の頭文字を取り「S+3E」と言われています。しかし、現在のところ、これらの条件全てを満足する発電方法はありません。そのため、様々な発電方法の長所と短所を考えて、うまく組み合わせていく「エネルギーミックス」という視点が大切です。

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司会:古田厚子さん



●再生可能エネルギーの現状 

―九州は、気象条件に恵まれているため、再生可能エネルギーの導入量が多いようですが、現状はいかがでしょうか?

 竹内 2016年度の九州の発電割合を見ると、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの割合は18%と、全国平均の10%を大きく上回っています。再生可能エネルギーは国産のエネルギーで、発電する時に二酸化炭素を出さない点では大変優れていますが、発電コストが高いという課題があります。このコストは、再生可能エネルギーの普及を図る国の政策により、電気の使用量に応じて消費者が負担することになっています。皆さんも自分がいくら負担しているのか、検針票などで確認してみてください。 

―太陽光発電など再生可能エネルギーだけで全ての電気を賄うことはできないのでしょうか。

 竹内 実は電気を安定的に供給するためには、「作る量」と「使う量」を常に一致させる必要があるのです。電気が足りない場合はもちろん、余ってしまっても駄目なんです。太陽光発電が作る電気の量は、下記の図のように天候によって大きく変わるので、全ての電気を賄うということは難しいのです。
 作りすぎたり、足りなかったりした電気については、他の発電所で調整していますが、それにも限界があります。

―最後に一言ずつお願いします。

 石原 日本は自然に恵まれています。インドや中国では大気汚染で青空が見られなくなったと言われますが、日本の青い空を守ることがエネルギー問題を考えることにつながります。1日1度でいいので、空を眺めてエネルギーについて考えてみてはいかがでしょうか。

 竹内 エネルギー問題は一人一人の生活に直結しています。いろんな点に目配りしながら、エネルギー問題を自分たちの身近な問題として、関心を高めていただけたらうれしいです。

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※エネルギーミックスについて 

 政府はエネルギー政策の柱となる2030年度の電源構成比率について、再生可能エネルギーを22~24%程度、原子力を22~20%程度とし、ほかを火力(天然ガス、石炭、石油)で賄う方針。

 

プロフィル 

◆石原良純さん 1962年神奈川県逗子市生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業。舞台、映画、テレビドラマなどに多数出演。湘南の空と海を見て育ったことから気象に興味をもち、1997年気象予報士に。日本の四季、気象だけではなく、地球の自然環境問題にも力を入れている。

◆竹内純子さん 慶応義塾大学法学部卒業。尾瀬の環境保護、農林水産省生物多様性戦略検討会委員などを歴任。環境・エネルギー政策への提言活動に関わり、国連の気候変動枠組条約交渉にも参加。筑波大学客員教授も務めている。

 

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