2006 知事選



地域を問う 06知事選
< 15完 >
壱岐支局から  琴岡 秀彦
    原の辻遺跡の活用策


 【小久保候補】歴史、文化の貴重な公共財として後世に引き継ぐための保全と学術資源化は行政本来の責務。専門家の意見をもとに「必要十分」な対策を講じる。観光資源化は収益面で非常に困難であり、安定的運営が懸念される。「県がハコモノを造り、市が運営する」という施策では問題は何も解決しないばかりか、政策悪化の誘引となる。

 【山下候補】遺跡の価値を県民や県外に知ってもらうために、遺跡の成り立ちや出土品を分かりやすく展示する「原の辻遺跡展」を各地で開催する。地元と協力して現地の遺跡と展示館を整備し、県内外からの見学者の誘致を図る。子どもたちが、アジアとの交流を知り、誇れる遺跡を体験する「原の辻ツアー」を進める。

 【金子候補】国の特別史跡で極めて貴重な歴史遺産を壱岐の地域振興に活用し、交流人口の拡大を進めることが必要で、復元整備に取り組んでいる。さらに、この原の辻を有効に活用するため、県立埋蔵文化財センターを壱岐市に建設し、本県の考古学の研究拠点のみならず東アジアの国際交流など、地域振興の核となる施設として、壱岐市の一支国博物館(仮称)と一体的に整備する。

写真
原の辻遺跡から臨む埋蔵文化財センターなどの建設予定地=壱岐市芦辺町
 弥生時代の集落として、国が国内三カ所目の特別史跡に指定した壱岐市の原の辻遺跡。中国の歴史書「魏志倭人伝」に登場する「一支国」の王都に特定された極めて重要な遺跡で、復元整備へ向けた計画が進む。

 その遺跡を一望できる約七百メートル離れた丘陵地に、県と市は一体で県立埋蔵文化財センターと壱岐市立一支国博物館(仮称)を建設する。二〇〇八年度末に完成予定で、総事業費は四十億円近くに上る見込み。

 県教委と壱岐市教委が策定した施設の整備基本計画は、この施設を単なる研究や展示施設としてだけではなく、壱岐島の歴史文化を生かした観光資源の中核と位置付け、「壱岐全体の地域振興の拠点に」と期待を込める。

 福岡市から高速船で約一時間の地の利を生かし、観光振興で交流人口の拡大に力を注ぐ壱岐市。だが、〇四年に同市を訪れた観光客数は延べ約六十五万人にとどまり、〇一年に比べて約五万五千人減った。

 「自然を売り物にした観光地は壱岐以外にもさまざまあるが、原の辻遺跡は壱岐だけのもの」。市観光商工企業課の西村善明課長は、同遺跡と一体化した施設活用に期待を込める。博物館の開館で観光地としての魅力を増し、課題である宿泊観光客の取り込みにつなげたい考えだ。

 一方、深刻な財政難の下での巨大施設の建設に、市議会は反発。市の財政に与える影響を懸念し、「事業規模が大き過ぎる」「管理費を圧縮すべきだ」などと計画見直しを求めた。

 こうした動きを受け、県と市は施設規模を当初の八割に縮小。市の建設負担を当初の四億円から二億三千万円に、年間一億三千万円を見込んでいた管理運営費を八千万円に変更した。それでも入館料収入を除いた市の管理運営費の持ち出しは、年間約五千万円に上る。

 市は県に負担軽減を求める考えだが、住民には市の財政を圧迫しかねない巨大施設に疑問が残る。建設費や経費などを抑えながら、いかに魅力ある施設にできるか。県と市に突き付けられた課題は重い。


2006年2月3日長崎新聞掲載

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