2006年 知事選


攻防“17日”/少年事件と教育問題

 二〇〇三年九月二十九日午後―。長崎家裁の地下駐車場から一台のワゴン車が急発進して走り去った。黒いフィルムで窓ガラスを覆った車内には、家裁で最終審判を受けた男児誘拐殺害事件の加害少年=当時(12)=が乗っていた。衝撃的な事件から約三カ月が過ぎていた。

 事件後、県教委は学校への通知や教育関係者との会合を繰り返し、応急策を打ち出した。ただ、学校現場にはやや違った受け止め方があった。

 例えば、行政が求めた生徒との面談。ある中学校の教諭(34)は「行政が外向きに姿勢を示すには有効だが、実態は単に面談ありきだった。同僚と具体的にどうすればいいか悩んだ」と振り返る。面談の実施率だけに腐心する学校幹部にも疑問を抱いた。

 事件は不幸にも続く。翌〇四年六月、佐世保の小学校で六年女児が同級生を殺害。昨年六月には平戸で中学生の兄が小学生の妹をバットで殴打、大けがを負わせた。

 教育行政は対応に追われたが、学校と家庭、地域社会の連携が共通課題だった。

 大型事業の在り方や経済活性化策などを中心に論戦が続く知事選。候補者は教育問題にどう対応するのか。

 新人の小久保徳子候補(47)は「事件を機に立ち上がった市民グループなどを結び、対話中心の活動を進める」とし、「地域コミュニティーの再生」を掲げる。行政主導ではなく、住民による世代間交流の促進に活路を見いだす考えだ。

 少年事件が相次いだ結果、“学校現場の今”を考える上でのキーワードが表面化した。発達障害への理解、命を大切にする道徳教育、心のケア、インターネットの利用モラル―。福祉分野にもまたがる内容といえる。

 現職の金子原二郎候補(61)は「知事部局に『子ども局』のような組織をつくり、福祉も含めた一貫した政策に取り組む」と機構改革を提言する。少子化対策にも関連し、健全育成など子育て全般を支援する構想だ。

 一方、一連の事件の背景に受験競争の激化を指摘するのは新人の山下満昭候補(53)。高校入試の総合選抜制廃止や高校統廃合について「子どもたちのストレスを強め、今の事態を招いた」と指摘。「小、中、高校の三十人学級で目の届く教育」を柱に据える。

 今回、少年事件に関連した教育問題は、知事選の大きな争点にはなっていない。前出の教諭は三候補の主張に「事件以降の不安は、いまだ大きい。もう少し詳しい政策はないのだろうか…」と話す。教育現場の戸惑いや焦りに、各候補はどう応えるのか。

2006年1月25日長崎新聞掲載


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