(3)県民へのアピール

   関心高めようと躍起


世界遺産フォーラム
昨年12月に開かれた世界遺産フォーラム。県内外の参加者が熱心に耳を傾けた=長崎市内
世界遺産への道 課題編・教会群とキリスト教遺産

NPO法人と行政が一丸 景観保護や巡礼マナー徹底も必要

 「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」の世界遺産登録を目指す上で、県民がその価値を知り、世界に誇るべき資産だと認識することは前提ともいえる。現在登録に向けた事務手続きは着実に進んでいるものの、県民の熱気は暫定リスト入り直後に比べるとやや薄れつつある。今回はPRの現状を紹介するとともに、今後の登録に向けて求められる景観上の規制や祈りの場である教会でのマナー徹底など、ルール作りやその普及の取り組みについてもリポートする。

 今月中旬、長崎市元船町にある特定非営利活動法人(NPO法人)「世界遺産長崎チャーチトラスト」の事務所では職員が28日から12月25日まで開くイベント「長崎クリスマス」の準備に追われていた。

 期間中は大浦天主堂(長崎市)や青砂ケ浦教会(新上五島町)など11カ所の教会にあるキリストの誕生場面を再現した馬小屋を見学できるほか、教会でのコンサート、キリスト教関連の場所を巡るウオーキング、写真展なども実施。今年が初めての開催で、県民に本県のキリスト教文化を身近に感じてもらうのが目的だ。

イベントで啓発

 チャーチトラストは2007年10月に設立。活動方針として「長崎の教会群−」に関する啓発と情報発信、教会と周辺環境の整備・保存に向けた基金の創設などを掲げている。初代理事長は現NHK会長の福地茂雄氏で現在は脚本家市川森一氏が務めている。

 昨年は、11月に明治時代にキリスト教を布教し慈善事業にも取り組んだド・ロ神父の業績をたどるシンポジウムを同市外海地区で開いたほか、世界遺産登録の課題をテーマにしたフォーラムの実行委に参加。12月に同市内であったフォーラムには世界遺産の情勢に詳しい学識経験者や行政関係者らがパネリストを務め、活発な意見交換を展開。県内外から約160人が参加し、議論に耳を傾けた。

パンフレット
教会でのマナーを紹介したパンフレット
 本年度はほかにも教会群などを被写体にした写真コンクールの実行委に参加するなど、県民の関心を高めようとさまざまな取り組みを進めている。

 栄信歳マネジャーは「まず県民が教会群を世界遺産にすべきと感じ、国民にも広く伝えていくことが重要」と話す一方「そう簡単ではない」と苦悩の表情も見せる。

現状は「横ばい」

 活動資金は趣旨に賛同する会員からの寄付で賄っているが、会員数は約150人で横ばい状態。億単位が必要という基金も数百万円にとどまっているという。「県民運動になっていかなければ、世界遺産登録は難しいのではないか」と現状を不安視する。

 登録を推進する県や関係市町も広報に取り組んでいる。今年は各構成資産候補の写真を掲載したポスターや、映像を収めたDVDを制作。県世界遺産登録推進室の嶋田孝弘室長は「これまでは県民に認知してもらうことが第一だった。来年3月までに構成資産が正式に決まる予定で、今後はその価値を広く知ってもらうことに力を入れたい」と話す。

重文選定目指す

 世界遺産登録に向けてはさまざまなルールも必要になる。

 世界遺産となるために必要な構成資産の保護には資産周辺の景観保護も含まれる。「長崎の教会群−」の構成資産候補となっている文化的景観を持つ6市町は登録を見据えて国の重要文化的景観への選定を目指している。既に平戸市は7月に景観条例を施行し、指定地域で建築物や広告物の制限などを実施。ほかの市町も同様の条例策定など景観保護に向けた作業を進めている。教会など文化的景観以外の資産候補についても、周辺の景観保護が必要になる。

 景観保護が求められる中、県は構成資産候補周辺での公共事業を景観に配慮して実施するガイドラインを策定する考え。大学教授らで構成する検討委員会を12月上旬に設置し、各市町が制定する景観条例に抵触しないよう事業を実施するとした内容を本年度中にまとめる見通し。

 一方、世界遺産登録の必須条件ではないものの、今まで以上に訪問者が増えた場合、教会でのトラブルも増える可能性があり、マナー徹底が求められる。

 県内の教会などを巡礼で訪れる人たちに情報提供しているNPO法人「長崎巡礼センター」によると、近年教会を訪れる人が増えたことで、教会に置いている信徒の私物が持ち去られたり、祈っている信徒がいるのに騒がしくするなどのトラブルも発生しているという。

トラブル防止を

 県観光連盟は同センターと連携し、今後の世界遺産登録を見据えた対策に乗り出している。具体的には巡礼地を紹介するパンフレットに教会でのマナーを記載しているほか、現在はポスターも製作中で、本年度中に県内約140カ所の教会に掲示してもらう考えだ。さらに旅行者と接する旅行代理店やバス会社向けにマナー普及も図っている。掃守純朝国内誘致部長は「世界遺産登録が現実化すると思われる数年後になってばたばたしないよう今のうちから取り組みたい」と話す。

 同センターの入口仁志事務局長は「『教会とは何をする場所か』ということを知ってほしい。そうすればどう振る舞えばいいか自然に分かってもらえるはず」と期待を込める。

文・村田傑人


2009年11月28日長崎新聞掲載







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