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めざせ世界遺産:企画 世界遺産への旅・13
2007年10月13日長崎新聞掲載
大野教会
=下大野町=
―
長
崎
市
―
出津教会
=西出津町=
深い精神性脈々と 潜伏期乗り越え安寧の里に
信仰のよりどころとなっている出津教会。白いしっくいの壁がまぶしい=長崎市西出津町
雄大な角力灘(すもうなだ)の眺望を背に、小高い丘の上に立つ白亜の教会を目指し坂道を上っていると、近くにある修道院のシスターと擦れ違った。会釈をし、ふと空を見上げると太陽がさんさんと光り輝いていた。
人口約四千八百人の三割強をカトリック信者が占める長崎市外海地区(旧西彼外海町)。「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」を構成する計二十件のうち、出津教会など四件がある。
「信仰の古里」
前の出津教会主任司祭で、カトリック長崎大司教区カトリックセンター館長の山内実司祭(58)が「長崎にとって外海は信仰の古里」と語るように外海の歩みは日本のキリシタン史とも重なる。
外海とキリスト教との出合いは約四百三十年前にさかのぼる。キリシタン大名として知られる大村純忠の勢力下にあった外海の領民の多くが洗礼を受け、神浦にはイエズス会の布教所が建てられた。だが、一六一四年に徳川幕府が禁教令を発布。多くの宣教師が国外に追放され、追及を逃れながらひそかに布教活動を続けた神父らも捕らえられ、キリシタンは潜伏期に入る。
潜伏した外海のキリシタンは「帳方(お帳役)」や「爺役(爺さん役)」と呼ばれる指導者を中心とした独自の組織を形成し、約二百五十年もの間、口伝で信仰を守り抜いた。日本人伝道者、バスチャンが残した三四年の太陰暦によるキリシタン暦「バスチャンの日繰り」などが信仰の支えになった。
先祖代々の心
現在も出津と黒崎では約五十世帯が日繰りを信仰生活の中心に「昔キリシタン(カクレキリシタン)」信仰を守り続けている。出津の爺さん役、木村友好さん(71)=西出津町=の自宅を訪ねた。
出迎えてくれた木村さんは「今は隠れているわけでもないんだが」と苦笑いした。「なぜ、信仰を守り続けているのか」と尋ねると「先祖代々守り伝えてきたものだから。ほかの宗教であっても、何を守るかは一緒。心の問題、精神の問題」と語った。
山と海に挟まれたわずかな土地での貧しい暮らしの中で信仰の中に光を見つけ、守り抜いた外海の人たち。山内司祭は「外海の人たちが信仰を捨てなかったのは、キリスト教の中に人間として生きる喜びの源や、命の尊さを見つけたからではないか」と話す。
外海町誌によると、大村藩では当時、藩の経済安定策の一環で人口増加を抑えるため、長男の子以外を殺す「間引き」を強制していたという。キリシタン弾圧下の一七九七年に五島藩主が大村藩に開拓移民の受け入れを申し入れたため、外海とその近隣から約三千人が安息の地を求めて海を渡り、五島の各地へと散らばっていった。
一八七三年に禁教の高札が撤廃されてから六年後、フランス人宣教師、マルコ・マリ・ド・ロ神父が外海に赴任。神父の指導の下、出津、大野の両教会が建てられ、外海の信仰の歴史に新たな時代の扉が開いた。
信者の一人で、七歳まで大野教会の近くに住んでいたという山本末秋さん(66)=東出津町=は「当時の生活は貧しかったが、教会の助けがあった。教会では宗教とは何か、人の道とは何かを教わった。学校以上に影響を受けた」と語る。
安寧を取り戻した“キリシタンの里”にゆったりとしたときが流れる。信仰の中に人間存在の価値を見いだし、信仰を守り抜いた人たちの深い精神性は今も脈々と受け継がれている。
文・蓑川裕之
写真・吉田利一
趣深い「ド・ロ壁」が特徴的な大野教会。マリア像が優しく見守る=長崎市下大野町
小高い丘の上に立つ出津教会。朝夕などには美しい鐘の音が“キリシタンの里”に響く=長崎市西出津町
出津教会、大野教会
ド・ロ神父の設計、指導で創建
出津教会、大野教会 いずれもド・ロ神父の設計・指導により創建された。ド・ロ神父は、多くの教会建築を手掛けた鉄川与助に西洋建築技術の知識を伝えるなど長崎の教会建築史に大きな足跡を残した。「長崎の教会群−」の構成要件の一つで、国指定重要文化財、旧羅典神学校(長崎市南山手町)も神父の設計によるもの。
出津教会は外海に赴任したド・ロ神父が設計・指導・監督・建築した最初の教会で、1882年に完成。資材を調達するため、神父は自ら山に入り、小屋で生活しながら材木を選び、伐採の指示をしたと伝えられる。
1909年に鐘楼などが増築され、現在の外観となった。壁面はれんが造りで、風の強い地理的特性に配慮した低く堅牢(けんろう)な造りとなっている。実用性を重視し、華美な装飾を排した白亜の簡素な姿からは神父の人となりが感じられる。
大野教会は大野地区26戸の信者のために造られた出津教会の巡回教会で、1893年に完成。地元の自然石を乱れ積みした外壁を構造主体としており、接ぎ目には、石灰・赤土・砂を混合したものが使われ、「ド・ロ壁」と呼ばれる。小規模ながら趣深くローカル色に富んだ教会。
いずれも1972年に県有形文化財に指定されている。
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