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  めざせ世界遺産:企画 世界遺産への旅・11
2007年9月16日長崎新聞掲載

江上教会

=奈留島=
 





旧五輪教会

=久賀島=

移住の象徴、地元活力へ 島が過疎化 厳しい維持・保存

写真1
木々に囲まれ、清そな雰囲気の江上教会。野の花がつつましく彩る=五島市奈留町

 五島列島には約五十の教会が点在する。美しく素朴なフォルムの木造、重厚なれんが造り、近代的な鉄筋コンクリート造り、手作りのステンドグラスをはめた教会、民家にしか見えない教会も。キリシタン弾圧から逃れてきた信者が、島々の辺境地に分散して住み着いた五島の歴史を、教会の数の多さが物語る。今もそれぞれの場で島民は、教会の維持、保存に努めている。

現在は3世帯

 福江港から船で三十分。奈留島は、約三千三百人が暮らす漁業の島。教会は、奈留教会が本部。巡回教会は江上と南越の両教会で、信者数は約三百人という。

 奈留小教区の信者、葛島幸則さん(54)の運転で、相ノ浦湾を望みながら島の北西へ。遠命寺トンネルを抜けると正面に紺ぺきの海が広がる。一九九八年に廃校となった江上小校舎に隣接し、タブの巨木に囲まれた白い教会がある。

 「天主堂」の表札を正面上部に掲げた江上教会。五島出身の鉄川与助の設計、施工で、県内に現存する木造教会堂で最も完成度が高いとされる。

 江上地区は以前、二百人近くの信者がいた。しかし過疎化が進み、現在は三世帯。高齢化と人口減の波にさらされながら祈りをささげている。

 静寂に包まれた天主堂。世界遺産登録へ向けた動きを、信者たちはどう受け止めているのか。奈留教会の本田靖彦神父(32)が口を開いた。

 「今いる三世帯の信者が教会の窓を開け、空気を入れ替え、掃除をし、そして静かに祈る。それが現在の江上教会。世界遺産の動きで島に来る観光客は増えることでしょう。しかし過疎集落で、お客さんに丁寧に対応するには限界がある」

 人口減が極限に近づきつつある集落。ひたすら信仰を守りながらも、教会の維持さえ困難な状況に、葛島さんが言葉をつないだ。

 「行政が管理する話もあった。しかし、ここに住む信者が守り、祈りの場としてこそ教会は生きているといえる。行政管理ではなく援助こそ必要。だが、いつかここに誰もいなくなる時が来るかもしれない」。将来への不安が膨らむ。

 ふと堂内を見渡すと、優しい表情のマリア像に目が留まった。私たちの会話を聞いているかのように感じた。島の信者、それにかかわる者たち、世界遺産登録の動き−。その営みを天は、静かに見詰めている。

取り壊し回避

 福江島と奈留島に挟まれた久賀島。冬にはヤブツバキが咲き誇る美しく豊かなこの島で一八六八(明治元)年、キリシタン禁教策を引き継いだ明治政府の下、五島の迫害は始まった。六坪の牢(ろう)に信者約二百人が詰め込まれ、八カ月もの残酷な責め苦により、四十二人が殉教。久賀島「牢屋の窄(ろうやのさこ)」から大弾圧「五島崩れ」は広がった。

 苦しみに耐え、時が過ぎ、八一(明治十四)年、島内の浜脇に久賀島出身の大工によって木造の浜脇教会が建てられた。一九三一年、この教会を建て替える際、解体して五輪地区の海辺に移築し、名称を変えたのが現在の旧五輪教会だ。

 八四年ごろ、新しい五輪教会建築のため、旧教会は取り壊すことになったが、その歴史的価値を知った島内の坂谷伸子さん(59)や福江市議だった夫の善衛さん(64)らが保存に向け活動。同教会は残され、九九年に国の重要文化財に指定。観光客も訪れるようになった。地元の信者は四世帯ほどで、すぐ近くの新たな五輪教会に通っている。

 島影で信者の祈りの場であり続ける江上教会。二度の取り壊しを免れ、島民が守った旧五輪教会。いずれも質実で質素な輝きを宿している。

 しかし、島の高齢化、人口減は止まることなく進む。「地元住民だけでは島の教会の維持は厳しい。市民、行政の具体的な応援のほか、観光客が島を訪れることで地元が元気になるような何らかのシステムが必要」。伸子さんは、そう考えている。

文・山田貴己
写真・吉田利一


写真2
海辺の風景に溶け込んだ旧五輪教会=五島市蕨町(久賀島)
写真3
手塗りの木目文様で装飾された江上教会の木製丸柱。鉄川与助のこだわりが随所に見られる=五島市奈留町

 江上教会、旧五輪教会  木造瓦ぶきで定法建築様式
位置図  「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」の対象遺産20件のうち、五島市には福江島の堂崎教会、奈留島の江上教会、久賀島の旧五輪教会がある。

 奈留島の江上では、1881年に外海(現長崎市)から4家族が移住し洗礼を受けた。また、さかのぼって1797年、奈留島の近くの葛(かずら)島(現在は無人島)に三重村(同)から信者が移住している。

 江上教会は1918年完成。費用は当時の金額で2万円。盛んだったキビナゴ漁などで賄ったらしい。木造、瓦ぶきの安定した重層屋根構成。左右対称のシンプルな外観、白い板張り外壁。内部はリブ・ボールト(コウモリ)天井、半円形アーチが基調。美しい木目文様を手塗りで装飾した木製丸柱が支える。床下は高くして風が通り抜けられる構造。2002年に県有形文化財指定。

 久賀島の旧五輪教会は、1881年建築、1931年移築。明治初期の教会建築史を物語る。木造瓦ぶき平屋で、外観は和風建築の造り。内部はリブ・ボールト天井、ゴシック風祭壇など定法どおりの教会建築様式。1999年、国の重要文化財に指定された。同島には、五輪、浜脇、牢屋の窄の各教会が現存する。


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