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めざせ世界遺産:企画 世界遺産への旅・2
2007年4月27日長崎新聞掲載
堂崎教会(下)
=五島市奥浦町=
地域と一緒に継承を 歴史問い直し、見えないもの心に刻む
マリア像が見守る堂崎教会。豊かな自然に囲まれ、献堂100周年を控える =五島市奥浦町
キリシタン弾圧下の一七九七年、五島藩主が大村藩に開拓移民の受け入れを申し入れたため、外海から多くのカトリック信者が五島に渡った。信者たちは、新天地での平穏な信仰と暮らしを夢見てこううたった。
「五島へ五島へとみな行きたがる 五島やさしや土地までも」
だが、たどり着き、居住できたのは狭隘(きょうあい)な山間部や海に迫る荒れ地などの辺境。禁教の時代、信者たちは表向きは神道や仏教を装い、貧困に苦しみながらキリスト教信仰を守り続けた。
信者の潜伏期について、浦頭小教区の真浦健吾神父は「ひそかに祝日表の『バスチャンの日繰り』に従って信仰した。また、キリシタンを捜す踏み絵は断腸の思いだったはず。家に戻ってから許しを請う祈りをささげたのです」と語る。
百周年の意義
かくれキリシタンのお帳箱(祝日表を保管する箱)、マリア観音、宗門御改帳、板踏絵(複製)−。キリシタン資料館となっている堂崎教会の貴重な展示品群。見て回っていた観光客の年配夫婦が足を止めた。「この絵、すごい」。県指定有形文化財の浦頭教会聖教木版画。「善人の最期」「悪人の最期」「最後の審判」の三枚に見入った。
一八七三(明治六)年に全国のキリシタン禁制の高札が撤廃された後、使われたとみられる色彩豊かな宗教教育教材。当時の天国や地獄のイメージが生き生きと表現されている。弾圧「五島崩れ」の苦痛を経て、ようやく信仰の自由を得た喜び、開放感が伝わってくる。この時代、七九年にマルマン神父は、堂崎教会を創立。ペルー神父によるれんが造りの現教会は一九〇八年、献堂式が挙行された。来年、百周年を迎える。
信者らは五月にも献堂百周年実行委を発足させる。記念の野外ミサを中心に関連行事を執り行う予定だ。委員長に決まっている赤尾一美さん(54)は「この百年で、人類は戦争も経験した。行事を一過性に終わらせることなく、歴史を問い直し、私たちの誇りを見つめる機会にしたい」と話す。
「百年前、ひそかに信じるものを守り通してきた先人たちが、目に見えるものとして堂崎教会を造った。しかし今、社会で起きるさまざまな事件を踏まえたとき、信仰心は薄らいでいると感じる。このとき、私たちは目に見えないものをこそ心に刻まねばならない」。真浦神父は、百周年の意義を信者に語り掛ける。
接点が増える
長きにわたる苦難を経て信者と子孫たちが守り支えてきた五島の信仰と教会。近年、信者以外の人たちにも、教会はある種のあこがれや尊敬を伴った特別な場として見直されてきている。
三月、奥浦小と奥浦中の卒業を控える児童生徒約三十人が初めて、卒業記念のイソシバを堂崎教会近くに植樹。真浦神父が歴史を語り、子どもたちは真剣に聞いた。高校生が自主的に教会周辺のごみ拾いをする姿も見られるようになった。信者以外の五島の市民、子どもと教会の接点が、少しずつ増えてきている。
「長崎の教会群の世界遺産暫定リスト追加で、堂崎教会への関心も高まっている。地域の方々にも教会を『奥浦の宝』ととらえてもらい、献堂百周年は、一緒に手を取り合って引き継いでいくためのきっかけにしたい」。赤尾さんは思いを込めて教会を見上げた。
文・山田貴己
写真・吉田利一
堂崎教会近くの岩場でイワガキ採りに精を出す女性信者ら
県指定有形文化財の浦頭教会聖教木版画。左から「善人の最期」「最後の審判」「悪人の最期」=堂崎教会
▼ズーム/五島の教会と「子部屋」
西洋と日本の建築技術融合
多くの島々からなる五島では現在、約50のカトリック教会が活動。1566年、五島にキリスト教が伝わり禁教、弾圧の歴史を経て1873年、キリシタン禁教令が解除された。五島の潜伏キリシタンと子孫たちは、信仰の自由を手に入れた喜びを力に、西洋と日本の建築技術が融合した教会を次々に建設。複雑に入り組んだリアス式海岸の浦々や山腹、半島の傾斜地など厳しい環境が大半だが、雄大な自然に溶け込んだ教会の風景こそ、五島の信仰の歴史と精神性を色濃く表している。造形的に質の高い教会だけでなく、生活に根差した質素な造りの教会も少なくない。
五島で教会建設の口火を切ったのが、マルマン神父が79年創建した木造の堂崎教会仮聖堂。神父は翌年、浜崎ツイを指導し、奥浦の大泊に恵まれない子どもたちを育てる「子部屋」を創設。堂崎に移設して教会と一体となり、女性信者らが孤児養育や助産、病人看護に献身した。分離して1909年、「奥浦慈恵院」と改称。現在も児童養護施設として運営されている。
インタビュー/五島市観光協会長 木口 利光さん(52)
巡礼のマナー伝えたい
浦頭小教区の一信者。同区の信者数は二百一戸、約五百五十人。堂崎教会献堂百周年となる来年は、歴史を振り返る機会にしたい。
また、日本人初の海外派遣宣教師、中村長八神父は奥浦出身。五十八歳でブラジルに渡り、亡くなるまでの十七年間を布教にささげられた。百周年をきっかけに中村神父の足跡を含め、キリシタン資料館の資料の調査、整理、より分かりやすい展示などを推進したい。
世界遺産の登録を目指す動きに伴い、五島の教会を訪れる観光客も増えてきている。観光面では大いにプラスだが、教会は祈りの場。観光客に巡礼のマナーをしっかりと伝えていくことが非常に重要。
また、焼失した新上五島町の江袋教会の教訓を踏まえ、教会の防災も課題。地元消防団との連携、訓練が不可欠であり、信者と地域で力を合わせ、教会を維持していきたい。
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