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めざせ世界遺産:企画 世界遺産への旅・1
2007年4月14日長崎新聞掲載
堂崎教会(上)
=五島市奥浦町=
弾圧乗り越え、信仰守る 月1回ミサ、資料館として歴史も伝達
落ち着きと重厚感のある美しい外観。観光客も多く訪れる堂崎教会 =五島市奥浦町
四月一日の夜明け前−。修道女(シスター)が懐中電灯の明かりを頼りに、海沿いの教会へと入っていく。やがて、子どもや白いベールをかぶった女性、お年寄りの信者たちが、教会入り口でソテツの葉を一枚ずつ手にして奥へ。復活祭の一週間前、「枝の主日(しゅじつ)」のミサだ。
五島市福江島の北東に位置する浦頭小教区。丘陵が海側にせり出し、平地が少ない離島の厳しい自然条件が広がる。小教区内にある奥浦湾口のカトリック集落、堂崎の岬の突端に、赤れんが造りの教会は立地する。毎月第一日曜午前五時半から、第一ミサだけが開かれている。
在り方自問自答
静寂の中、典礼委員の山本一夫さん(57)は、教会の板床に正座し、祈りの言葉を唱えはじめた。続いて約三十人の信者が声を合わせる。浦頭小教区主任司祭の真浦健吾神父は、信者がささげ持つ葉に聖水を振り掛けるなどして儀式を進め、説教で静かに語り掛けた。
「長崎の教会群が世界遺産になろうとしています。信仰を守ろうとしてきたことについて、あらためて考えなさいと神は言っています。もしかしたら信仰を自分自身が否定しているかもしれない。自分自身を迫害しているかもしれない」
世界遺産暫定リスト追加という大きな動きの下で、信仰の在り方をこそ自問する信者たちは真剣なまなざしだ。オルガンに合わせて賛美歌の歌声が響き始めるころ、ようやく外が白み始めた。
四百四十年ほど前、カトリック信仰の奨励から始まり、やがて迫害が繰り返された五島。厳しい歴史を歩みながらも、堂崎は五島における信仰、布教の拠点であり続けた。
「子どものころは、シスターがほら貝を吹いてミサの開始を告げていた。透き通って遠くまでよく聞こえる音だった。ミサはラテン語で行われていた」
へき地切り開く
年配の男性信者が、五十年前を振り返り、目を細めた。当時の堂崎は、半農半漁で、まともな道路さえない「辺境」。海岸づたいに歩くか、櫓(ろ)こぎの小舟などで堂崎に集まってきていたという。信者たちもまた、弾圧期に大村領外海などから移住し人里離れたへき地を切り開き、隠れるように住み着いた信徒の子孫らであった。
マリア像が見下ろす教会。桜舞い散る庭では、二十六聖人のヨハネ五島像の横で、若いカップルが記念撮影を楽しむ姿も見られる。一帯の信仰の中心は、浦頭教会に移行。堂崎教会は現在、貴重な文化財を展示するキリシタン資料館として、多くの観光客が訪れるスポットでもある。
「以前、信者たちは弾圧の経過を引きずり、ひたすら自分たちの信仰を守ることで精いっぱいだった。迫害も差別もない時代になり、堂崎教会も資料館として信仰の歴史を広く知ってもらうという新たな役割を担っている。だが、地域の信者にとっては今も昔と同じ心のよりどころ。時代が移り変わっても教会と信仰は守り続けていきたい」。典礼委員の山本さんはそう話す。
文・山田貴己
写真・吉田利一
光が差したステンドグラスやコウモリ天井が静謐(せいひつ)な雰囲気を一層際立たせる天主堂内
ミサで祈りをささげる地元の信者たち =4月1日午前5時45分
堂崎教会
外海から移住潜伏
1566年、五島の十八代藩主宇久純定の要請でポルトガル人宣教師アルメイダと日本人修道士ロレンソが福江島に来島。五島初の教会が、奥浦に建てられた。97年の26聖人殉教では五島出身の19歳の若者、ヨハネ五島も加わっている。
キリシタン弾圧が続いていた1797年から大村領外海など約3000人の信者が五島に移住。第1陣の上陸地は奥浦の六方だった。
信徒発見後の1868年、久賀島から始まった五島全島での壮絶な大弾圧「五島崩れ」を経て79年、マルマン神父が堂崎教会建立。全五島の宣教活動の本拠地とし、潜伏キリシタンの発見などに尽くした。現天主堂は、ペルー神父によって1907年しゅん工。翌年、献堂式が挙行された。イタリアの赤れんがを使用したゴシック風様式。設計、施工は五島出身の鉄川与助。「日本26聖人殉教者聖堂」と命名された。内部は木造、色ガラス窓、コウモリ天井で、五島内における同型の天主堂のモデルとなった。
現在は巡回教会。77年からキリシタン資料館として公開。屋外に聖ヨハネ五島像、アルメイダ布教記念碑など。社会奉仕施設や修道院の草分けでもある。
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