
幼い子どもは病気にかかりやすい。いきおい、医療機関で受診する回数が増え、医療費もかさむ。それでは保護者の負担が重くなりすぎて大変でしょうと、地方自治体が独自に費用の一部を肩代わりするのが「乳幼児医療費助成制度」だ。
制度には、いったん医療機関窓口で保険診療の自己負担額の全額を払い、後で役所へ出掛けて申請手続きを行った上で助成分を払い戻してもらう「償還払い方式」と、医療機関窓口で最初から助成分を差し引いた額だけ払えばよい「現物給付方式」の2通りある。もちろん、保護者にとって便利なのは、役所での手続きが不要な現物給付方式だ。
だが本県ではこれまで、県の「償還払い方式維持」の基本方針に沿って、長崎市を除く全市町で償還払いが続けられてきた。
ところが中村法道知事が3月、当選後初の県議会で「現物給付方式への移行促進」の意欲を示したことから、県内市町で現物給付移行機運が一気に高まった。
2011年度には県内ほぼすべての市町が現物給付方式に移行するとみられ、佐世保、諫早両市は一足早く、今年10月からの移行を決めている。
県民の多くが現物給付を希望している以上、移行は早ければ早いほどよい。他の市町も新年度まで待たずに、早急に移行が実現できるよう努力してほしい。
乳幼児医療費助成制度は、就学前の乳幼児を対象に、1カ月当たり1回受診で800円、2回以上受診は1600円を上限として保護者負担額とし、保険診療の自己負担額から、同保護者負担額を差し引いた分を自治体が助成する。本県では、償還払い、現物給付の違いはあるが、全市町で同制度が実施されており、助成額を県と市町が2分の1ずつ負担している(中核市の長崎市に限り、県3分の1、市3分の2)。
長崎市は07年度から独自の判断で現物給付に移行した。この結果、同年度の乳幼児医療費総額が前年度より約4割増えたという。市は「それまで申請手続きが面倒で、せっかくの制度を活用していなかった市民が多かったことを示している。市の財政負担は増えたが、市民に喜んでもらっているので、現物給付に踏み切ってよかった」と話す。
他に先駆けて独自の改善策に踏み切ったのが大村市だ。同市は1999年、払い戻し申請が医療機関の窓口でできる「代理申請方式」を導入した。払い戻し額が後から戻ってくる点では基本的に償還払いだが、役所に出直さなくて済む点では現物給付に近い。同市は「地元医療機関の協力で代理業務を引き受けてもらっており、定着しているので、来年度以降も代理申請方式を続ける」としている。
行政の子育て支援は一層、重要になっている。県内市町は今後も努力を重ねてほしい。同時に、子育て環境整備は基本的には国の仕事でもある。乳幼児医療費助成制度への国の支援を、県、市町一緒に強く求めていくべきだ。(高橋信雄)
(2010年8月29日長崎新聞掲載)
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