
日印原子力協定締結交渉などのためインドを訪問した岡田克也外相は21日、クリシュナ外相との会談で、「インドが核実験をした場合、日本は協力を停止する」との方針を伝え、核軍縮・核不拡散の考えを協定に盛り込むよう求めた。
クリシュナ氏はこれに反発、「インドは核実験モラトリアム(一時停止)を他国から強制されているわけではない。自発的に順守しており、今後もこの姿勢を維持していく」と述べた。
インドは既に米国、ロシアなど8カ国と原子力協定を結んでいるが、どの協定にも、こうした文言は盛りこまれていない。「他国の介入」を嫌うインドは、「核実験凍結は宣言済み」とした上で、それ以上の要求は一切、拒絶する姿勢を取り続けているからだ。
岡田−クリシュナ会談の結果、6月から始まった日印原子力協定交渉は、難航必至の情勢になった。
とはいえ、巨大なインドの原発市場に参入したいという経済界の要請を受けて動く日本政府と、日本の原子力技術をぜひとも導入したいインド政府の思惑は一致しており、協定の文言問題で交渉がストップする事態は想定しにくい。むしろ、核をめぐる文言問題に世論の関心が引きつけられている間に、水面下でビジネスの問題として交渉が着々と進められる可能性の方が高い。被爆地長崎では、それを懸念する声が強い。
仮に、そうした結果になれば、岡田外相の「核軍縮・核不拡散の文言盛り込み要求」も、日本国内の同協定への反発を和らげるためのジェスチャーにすぎなかったことになる。そのような政府の国民に対する欺瞞(ぎまん)は断じて許されない。
そもそも、核拡散防止条約(NPT)未加盟のインドと原子力協定を結ぶことなど、あってはならないことだ。協定締結は、被爆国日本が核拡散を容認してしまい、NPT体制崩壊の引き金を引くことにつながる。政府はインドとの交渉を直ちに打ち切るべきだ。
万一、インドが表面的に譲歩して文言盛り込みを受け入れたとしても、NPTの枠外にとどまりながら核保有国として君臨しようとするインドの身勝手な態度に変わりはない。文言を盛り込んでも、何の解決にもならないのだ。岡田外相の要求にインドが反発したことを、むしろ交渉打ち切りの好機ととらえるべきだ。
被爆国日本の政府の使命は、インドに核放棄を迫り、NPT加盟を迫ることである。菅直人首相、岡田外相をはじめとする政府のすべての閣僚に、その点をしっかりと認識してもらいたい。被爆国日本が経済的利益に目がくらんで、人類を滅亡の危機に導くことがあってはならない。
田上富久長崎市長は9日の平和宣言で日印原子力協定交渉に触れ、「これは、被爆国自らNPT体制を空洞化させるものであり、到底、容認できません」と強い調子で非難した。政府は、これを核廃絶を求める世界中の人々の声として聞くべきだ。(高橋信雄)
(2010年8月23日長崎新聞掲載)
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