
国連の潘基文(バンキムン)事務総長が5日、長崎市を訪れ、爆心地公園から世界に向かって核兵器の早期廃絶を訴え、その実現のために自ら先頭に立って具体的取り組みを進める決意を表明した。
現職の国連事務総長が被爆地長崎を訪れたのは、これが初めて。被爆地市民は、被爆の実相と核兵器廃絶の訴えを、国連を通じて世界に伝えるために長年、努力を重ねてきた。今回、事務総長が自ら長崎へ足を運んで被爆地の思いを共有し、その訴えを国連を代表する自身の訴えとして世界に発信してくれたことは、画期的で意義深い。長崎にとっても、核廃絶を求める世界中の人々にとっても、5日は歴史的な一日であったと言えるだろう。
長崎訪問に続き、潘事務総長は6日、広島市の平和記念式典に出席する。核兵器廃絶の機運を一層、高めるために、長崎、広島両被爆地訪問を決断した潘事務総長の力強く、真摯(しんし)な姿勢に心から敬意を表したい。今後は、被爆地と心を一つにして、核廃絶の取り組みを着実に進めるよう、国連事務総長として、いかんなく指導力を発揮してもらいたい。
長崎での潘事務総長は、長崎原爆資料館見学、被爆者との懇談、浦上天主堂訪問などを通じて、被爆地の訴えに熱心に耳を傾けた。その上で「きょうは、最も深く心を揺り動かされた一日だった」と述べた。
また爆心地公園では、原爆犠牲者に黙とうをささげた後、世界に向かってスピーチ。「私は、長崎市民に連帯の姿勢を示すために来ました」と述べた後、公園の原爆落下中心地碑を指し、「このような惨劇は、どんな人々にも、どんな場所にも、私たちはもう決して許しはしない。そういう決意の記念碑なのです」と強調。続けて、「このような兵器が二度と使われないようにする唯一の道は、そのすべてを廃絶することです」と言い切った。
被爆地の声を見事に代弁したスピーチであり、被爆地市民をこの上なく勇気づけるスピーチである。事務総長の熱意に感謝したい。
「核兵器のない世界」をうたうオバマ米大統領の登場で、核兵器廃絶の機運が世界的に高まった。だが、今年5月の核拡散防止条約(NPT)再検討会議では、核を信奉する核保有国の壁がなお厚いことを見せつけられ、被爆地に焦りといら立ちが募っていた。それだけに、今回の事務総長の長崎訪問と核廃絶の力強いメッセージ表明は、核廃絶機運に再び弾みを付ける効果があると期待できる。
事務総長が「核兵器禁止条約締結」「2020年までの核廃絶」など明確な目標を掲げて行動しているのも適切で、頼もしい。明確な目標を掲げて国際世論を高めていく以外に、核保有国の壁を乗りこえて人類の悲願を達成する道はないからだ。事務総長が今後も被爆地の声を代弁しながら、世界の先頭に立って核廃絶のために奮闘されるよう心から願う。(高橋信雄)
(2010年8月6日長崎新聞掲載)
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