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米大使、広島出席へ  米国世論変える機会にも

 米政府は29日、ルース駐日米大使を8月6日の広島市平和記念式典に出席させると発表した。

 原爆を投下した米国の代表が、原爆犠牲者を追悼する被爆地の式典に出席するのは初めて。これまで原爆投下をひたすら正当化し、被爆の実相から目を背け続けてきた米政府の姿勢からみれば、ともかくも式典出席に踏み切る方針に転じたことは画期的で意義深い。

 「核兵器のない世界」をうたって登場したオバマ米大統領の意向を反映した方針とみられる。米政府の決断を歓迎するとともに、今回の米大使広島式典出席を核兵器廃絶の前進に確実につなげるよう、オバマ氏の一層の奮起を求めたい。

 さらに、できれば今年、今年が無理でも来年には必ず、米政府代表を長崎に派遣し、平和祈念式典に出席させてもらいたい。広島、長崎両被爆地を訪れて被爆の実相を全体的に理解し、すべての犠牲者を追悼することは、原爆投下国の義務であり、それこそが、米国が世界に核廃絶を訴えていく上で不可欠の一歩であると考えるからだ。

 そして、なによりもオバマ氏自身に広島、長崎訪問を一刻も早く、実現してもらいたい。米大統領が自ら被爆地に立って核廃絶を呼び掛ければ、世界中の人々の心が大きく揺り動かされることは間違いない。それは、さまざまな核廃絶の取り組みの中でも、現時点では最も効果的な取り組みとなろう。米議会で大統領の被爆地訪問に抵抗があるのは承知しているが、多くの困難を乗り越えて、遠からずオバマ氏が、勇気ある決断を下すことを望む。

 そのためには、被爆地訪問の地ならしとなる努力を、オバマ氏が米国内で根気強く続けることが必要だ。

 米国では今も、「原爆投下は正しかった」「原爆投下で米兵100万の命が救われた」などという、米政府が長年にわたって意図的に流布させてきた虚偽の言説を信じている国民が多い。そのような誤った認識が、米議会や米保守派の原爆投下正当化論、核兵器信仰を支えているのである。

 米政府が国民に植え付けた誤った認識が、今になって米政府を縛っているのなら、その認識を改め、原爆投下の真実を知らせることが米大統領の義務だ。「原爆投下は必要なかった」「戦後の対ソ戦略をにらんだ政治目的を達成するために広島、長崎の市民を犠牲にした」「莫大(ばくだい)な費用を投じて開発した原爆の実験のために投下した」という、歴史学者の間では定説となっている真実のことだ。その真実に米国民が目覚めたとき、オバマ氏の訴えは格段に力を増すだろう。

 オバマ氏の取り組むべき課題は、氏の足元にもあるのである。その足元の課題に真剣に取り組むかどうかで、氏の「本気度」が判定できると言うべきだ。

 ともあれ、ルース大使の広島式典出席は貴重な一歩だ。大使は被爆地の声に真摯(しんし)に耳を傾け、その声を米国に、世界に伝えてほしい。(高橋信雄)


(2010年7月30日長崎新聞掲載)


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