
食料品など日常の買い物さえも、「近くに商店がない」「適当な交通手段がない」などの理由で困難を極め、生活に支障が出ている「買い物弱者」が、高齢者を中心に急増している。
買い物弱者支援のネットワークを、どうつくりあげていくかが、地域社会の緊急課題だ。県内でも、移動販売などさまざまな形で、買い物弱者のニーズに応えようとする動きが出ているが、事態深刻化のスピードに追いついていない。事業者だけでなく、行政、地域住民が一体となった支援網構築の努力が求められる。
注目しておきたいのは、買い物弱者ニーズに応える商業サービスの開発は、事業者にとってビジネスチャンスの創造につながり、大きな可能性を秘めていることだ。時代の要請を前向きにとらえ、未知の領域開拓に挑戦してほしい。
経済産業省の「地域生活インフラを支える流通のあり方研究会」が5月に発表した報告書は、日常の買い物に不自由する60歳以上の人が全国に600万人もいるとの推計値を示した。
こうした買い物弱者は、過疎地だけでなく、都市部でも同じように増えているのが特徴だ。かつてのニュータウンが次第に高齢化し、それにつれて団地内の店舗経営が難しくなって撤退が進み、いつのまにか日常の買い物さえ困難になっている。そんな状況が各地に出現している。買い物弱者対策は、すべての地域で迫られているとみるべきだ。
県内でも、買い物弱者を支える宅配や移動販売の動きが広まりつつある。
長崎市のあるスーパーは、カタログやチラシを見た顧客から電話で注文を受け、バイクで配達している。以前から利用していた別のスーパーの閉店で困り果てていた高齢者たちに、「本当に助かる」と好評だ。
大村湾漁協(西彼時津町)は4月から、消費者への直接販売を支援する国の補助を受け、長与ニュータウン(同長与町)で、鮮魚の移動販売を始めた。野菜や調味料も取り扱う。同ニュータウンも高齢化が進み、スーパー撤退で買い物が不便になっていただけに、住民に喜ばれている。
買い物弱者対策を前向きにとらえようと呼び掛けたのが、2010年版の九州経済白書(財団法人、九州経済調査協会発行)だ。
白書は、宅配や移動販売に対する「社会的ニーズは高まっている」とした上で、九州各地での先進的事例を紹介。「顧客に近づいていけば、無視するには惜しい需要が取り込める」と指摘し、買い物弱者を対象にした市場が、大企業も関心を示す「貴重な国内市場」になりつつあるという。地域密着で消費を掘り起こせば、ビジネスチャンスが必ずあるというわけだ。
買い物弱者の支援が緊急の課題で、しかもそれが経済活性化につながる可能性があるというのなら、あとは実行あるのみだ。県内でも幅広い分野の関係者が協力し、早急に、きめ細かな支援ネットワークを築き上げてほしい。(高橋信雄)
(2010年7月26日長崎新聞掲載)
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